2025年11月24日
シンガポール、2025年GDP成長率見通しを約4%に上方修正
シンガポール政府は11月21日、2025年の国内総生産(GDP)成長率見通しを「約4%」へ大幅に上方修正した。従来の1.5〜2.5%からの引き上げであり、製造業、卸売業、金融・保険業が予想以上に好調だった第3四半期の結果が背景にある。貿易産業省(MTI)は併せて2026年の成長率を1〜3%と初めて示した。
2025年の上方修正は、第3四半期のGDP成長率が前年同期比4.2%と、事前推計の2.9%を大きく上回ったことによる。第2四半期は4.7%成長であり、2025年1〜3四半期の平均成長率は4.3%に達し、2024年の4.4%に迫る勢いである。
製造業では、AI関連半導体やサーバー需要の急増を受け、エレクトロニクス分野が6.1%成長。このうち情報通信・民生電子は67.6%と異例の伸びを記録した。また、医薬品原料の高付加価値品生産が増加し、バイオ医薬品分野も8.9%成長した。卸売業でもAI関連機器の需要が追い風となった。金融・保険業では手数料収入が改善し、投資マインドの回復が寄与した。
近月の指標も強含んでおり、9月の製造業は前年比16.1%増と大幅回復、10月の非石油国内輸出(NODX)は22.2%増を記録した。こうした流れから、多くのエコノミストが2025年の成長率予測を引き上げている。
MTIは、米国の関税一時停止の影響による前倒し輸入(フロントローディング)や、米中を含む主要国間での貿易摩擦緩和が成長を支えたと説明。さらに、AIブームが米国経済と地域の半導体輸出を押し上げたとしている。
一方で、2026年は製造業と貿易関連サービスの伸びが2025年より鈍化すると予測。関税措置や地政学リスクの再燃が景気を冷やす可能性も指摘し、不透明感はなお高いと警告した。
それでもシンガポールは、AI投資拡大や半導体関税除外措置、米国との10%相互関税維持といった要因から、国際競争力の優位を保つとみられている。


