2025年11月21日
シンガポール、格差是正は税制依存せず多角的に対応するとウォン首相が強調
シンガポールのローレンス・ウォン首相は、格差是正に向けて税制以外にも多様な政策手段を有していると述べた。11月19日に開催されたブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムの夕食会で語ったものである。政府は公共住宅を通じた資産形成や、中央積立基金(CPF)への随時のトップアップによって国民に「ウェルス・インジェクション」を行っており、その結果、下位20%の世帯でも相当の純資産を保有していると説明した。
ウォン氏は、富裕層の流入によって格差意識が高まっているのではないかとの質問に対し、国内の富の不平等と、シンガポールを拠点に資金を運用する外国人の存在は別問題であると指摘した。国外からの資金流入は雇用を生み出す一方で、時に派手な消費行動が軋轢を生むとし、「シンガポールは平等志向の社会であり、我々の規範を理解してもらう必要がある」と述べた。
2023年の30億Sドル規模のマネーロンダリング事件に関連して不正資金の流入が問われた点については、「金融センターであればどこも直面する課題であり、重要なのは迅速かつ厳格に対処することだ」と強調した。
エネルギー政策では、小型モジュール炉(SMR)などの新技術を含め原子力の可能性を慎重に研究していると述べたが、即効性のある解決策は存在しないとした。水素利用や近隣諸国とのアセアン電力網の構築も選択肢として検討しているという。
米中関係については、両国の運命は最終的に「自国民の意思と行動」が決めると述べた。東南アジアは過去に代理戦争の舞台となった歴史があり、今後も特定陣営に与しない「マルチアラインド」の姿勢を維持するとした。
さらに、CPTPPやFIT-Pといった新たな枠組みへの参加は、将来の国際秩序の基盤づくりにつながると説明した。ウォン氏は「偉大なものは小さなところから始まる」と語り、独立後世代として初の首相として「次世代により良いシンガポールを残すことが使命である」と結んだ。


