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社会

2025年11月20日

リンギ強含みでも「帰国には不十分」 シンガポール勤務のマレーシア人の声

 リンギット高が進む中、シンガポールで働くマレーシア人の間では「送金額が目減りした」との声が強まっている。ツアー会社勤務のルー・ヨンタット氏は毎月2,000Sドルを実家に送金しており、2024年の大半は約6,800リンギ相当となっていた。しかし11月18日時点で為替は1Sドル=約3.20リンギとなり、同額を送金しても約400リンギの減少となる。それでも帰国を考えるほどの影響ではないという。
 
 ルー氏は「2009年に働き始めた時は1Sドル=2.40リンギだった。今の1:3でも十分だ」と話す。SNS上でも「2000~2010年の2.25~2.44に比べればまだ高水準」との声が多く、リングギット高だけで越境通勤の流れが止まる兆しは薄い。
 
 マレーシアの海外移住者186万人のうち、最多の113万人がシンガポールに居住しており、この構図は続いている。背景にはジョホールバルの生活費の高さがある。シンガポール勤務の27歳のムー氏は「JBの外食はカレー麺1杯が10〜25リンギと高く、生活費が下がらなければ戻れない」と語る。
 
 旅行業界で働くチョン氏は「為替が1Sドル=2.80リンギを割れば帰国も検討するが、JBの旅行業は収入が低く業種転換が必要」と語る。また、毎日の国境渋滞を避けられる点は魅力だという。
 
 統計局によれば、ジョホール州の2025年9月のインフレ率は2%で国内最高。こうした物価上昇も帰国に慎重な理由となっている。
 
 一方、分析ではリンギットは2025年末に3.20〜3.30、2026年にはさらに強含むとの予測がある。投資流入、輸出増、投資環境改善などが理由である。
 
 シンガポール在住マレーシア人協会のスン会長は「送金額が減って困る人もいれば、購買力維持を評価する人もいる」と説明し、長期滞在者は為替変動の影響が小さいと指摘する。
 
 給与水準の差も依然として大きい。クライのソフトウエアエンジニアの平均月収は約7,937リンギ、クアラルンプールでは5,873〜1万5,000リンギであるのに対し、シンガポールでは同職が6,125Sドルと倍以上である。
 
 帰国の決め手には為替だけでなく、安定したリンギット、競争力のある給与、キャリアの成長環境が必要だと専門家は指摘する。スン会長は「1Sドル=3リンギを割る水準は大きな転換点になるが、現状ではまだ ‘帰国圧力’ には至っていない」と述べている。

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