SIA客室乗務員、静かな支援でサービス優秀賞受賞

　シンガポール航空（SIA）の客室乗務員リビー・リム氏（34）が、東京発シンガポール行きの深夜便で高齢女性乗客を思いやり深く介助したとして、同社の「CEOサービス・エクセレンス賞」を受賞した。
 
　10月29日にJWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチで開催された授賞式では、個人・チーム合わせて86組が表彰されたが、その中でもリム氏の行動は特に注目を集めた。
 
　リム氏は10年の経験を持つ主任客室乗務員で、当日はエコノミークラス担当だった。しかし巡回中、ビジネスクラスのトイレ付近で困惑した様子の高齢女性を見かけ、事情を尋ねると「失禁してしまった」と小声で打ち明けられたという。彼女はその場で自らの予備のズボンを差し出し、汚れた座席を静かに清掃。「女性として、恥ずかしさを感じていることが分かりました。大切なのは尊厳を守ることでした」と振り返る。
 
　新型コロナ禍で航空業界が停滞した際、彼女はタントックスン病院の認知症病棟で介護補助として勤務しており、その経験から乗客が認知症の兆候を示していることにも気づいたという。乗客の希望により夫に知らせることなく、周囲に知られぬよう慎重に対応。汚れた衣類を洗って返すまで自ら行った。
 
　同賞ではほかに、ブライアン・ロー氏（28）とシャフィー・シラジュディン氏（36）が、高齢の車椅子利用者を丁寧に介助した事例でも表彰された。彼らは腹痛で衣服を汚した男性をチャンギ空港のビジネスクラスラウンジに案内し、清拭・着替え・休憩場所の確保まで一貫して対応。「安心して笑顔を取り戻してくれた」とロー氏は語った。
 
　SIAは「お客様と乗務員の安全・尊厳・快適を守ることが最優先である」とコメントしている。