2025年10月15日
シンガポール、第3四半期GDP成長率2.9%で予想上回る
米国の関税措置や輸出減速の影響が懸念される中でも、シンガポール経済は底堅さを示した。貿易産業省(MTI)が10月14日に発表した速報値によると、2025年第3四半期の実質GDPは前年同期比2.9%増となり、市場予想の2.0%を大きく上回った。
三菱UFJフィナンシャル・グループは「第2四半期の4.5%成長からは減速したが、前年の高い比較基準を考慮すれば堅調な伸び」と分析。ノムラ証券の東南アジア主任エコノミスト、ユーベン・パラクエレス氏は「製造業の落ち込みが回避され、観光回復や緩和的な金融環境がサービス業を支えている」と述べた。
マイバンクのチュア・ハクビン氏とブライアン・リー氏も輸出不振は一時的と見ており、「AI関連設備投資の拡大が電子部品輸出を支え、関税対象外の品目も多い」と指摘。同行は2025年通年の成長率見通しを3.2%から3.5%に上方修正した。ゴールドマン・サックスも3.0%から3.6%へ、RHB銀行も2.0%から3.0%へそれぞれ予測を引き上げている。
一方、オックスフォード・エコノミクスのシーナ・ユエ氏は「前倒し輸出による一時的な押し上げ効果は関税発動後に消える」と警鐘を鳴らした。特に、今後米国が半導体や医薬品(対米輸出の約3分の1を占める)にも関税を拡大する可能性があり、「不確実性が投資・雇用判断を遅らせる恐れがある」と分析した。
金融管理局(MAS)も同日公表した報告で、2025年前3四半期の成長率が前年同期比3.9%に達したと発表。ただし今後は「貿易関連セクターの活動正常化で成長は緩やかになる」と予測した。AI関連投資の拡大が輸出産業を下支えする一方、政府のSG60バウチャー効果は今後薄れる見込みだとしている。
産業別では、製造業が前年同期比横ばい(第2四半期は+5.0%)ながら、前期比では6.1%増と回復。建設業は公共・民間双方の需要で3.1%増を維持。卸売・小売、輸送・倉庫業は2.5%増、情報通信・金融・専門サービスは4.4%増と堅調だった。宿泊・不動産・行政支援なども4.1%増と拡大し、飲食業のみが微減となった。
政府は11月に2025〜2026年の正式な成長率見通しを改定予定であり、上方修正される可能性が高い。


