2025年10月10日
シンガポールの電子タバコ禁止政策、世界の指針に影響か
シンガポールの電子タバコ(ベイピング)禁止政策は、世界のニコチン規制における重要な転換点となり得る——。世界保健機関(WHO)の公衆衛生誌『Bulletin of the World Health Organization』10月号に掲載された記事で、マレーシア・サンウェイ大学心理学部のウー・シンリン博士がこう指摘した。
ウー博士は「シンガポールの事例は、禁煙・薬物政策の今後10年に影響を与える」と述べ、「規制では抑止できなかった分野で、禁止政策が効果を発揮するかどうかを検証する“自然実験”となる」と分析した。
シンガポール政府は2018年に電子タバコを全面禁止し、所持や使用が発覚した場合は最高2,000Sドルの罰金を科す厳格な措置を取っている。他国が規制緩和や害軽減の方向に進む中で、同国の方針は「青年の保護を成人の自由より優先する」点で異なると博士は指摘する。
一方で、ベイプ擁護団体からは「禁止は闇市場の拡大や紙巻きタバコへの逆戻りを招く」との批判もある。これに対しウー博士は、「青少年の脳発達に悪影響を及ぼし、依存リスクを高める科学的証拠がある以上、保護を最優先すべきだ」と強調した。
博士はさらに、今後の研究課題として「若年層の行動やリスク認識の変化、成人喫煙者への影響、保健当局への信頼度、そして非合法取引の発生」などを挙げ、「研究者・政策立案者・市民が協力してデータを蓄積し、今後の政策を科学的根拠に基づき議論すべきだ」と訴えた。
同誌は1948年創刊の国際的公衆衛生専門誌で、環境・公衆衛生分野で世界トップ15に入る学術誌である。


