2025年10月9日
シンガポール企業が求職者をカンボジア詐欺拠点へ誘導
シンガポール警察は、国内で求人広告を出しながら、採用後にカンボジアのリゾート施設での勤務を指示していたシンガポール企業「Changting Network Technology」について捜査を開始した。同社が指定した勤務地「ココン・リゾート(Koh Kong Resort)」は、オンライン詐欺拠点で人身取引被害者を虐待していたとして、米国財務省が制裁対象としたカンボジア実業家リー・ヨンファット氏の所有施設である。国連薬物犯罪事務所(UNODC)も詐欺関連施設として同リゾートを報告している。
Changting Network TechnologyはAIやサイバーセキュリティを手掛ける技術企業を装い、シンガポール勤務と称して各種職種の求人を地元・海外サイトに掲載していた。しかし応募者が内定後に知らされたのは、「フルタイム勤務地はカンボジアのココン・リゾート」という内容であった。警察にはすでに複数の通報が寄せられており、虚偽求人の可能性を含め調査が進められている。
地元紙ストレーツ・タイムズ(ST)が行った潜入調査では、偽名で応募した求職者がわずか1時間後に月給5,000Sドルの職を提示され、電話面接ではカンボジアでの3ヵ月研修が必須と説明された。さらに次の面談では常駐勤務に変更され、給与も3,000Sドルへ減額。宿舎は他人との相部屋で、パスポート情報提出と契約書署名を急かされたという。
STの調査によると、同社は2019年4月に設立され、登記上はパヤレバー・スクエアに所在。代表取締役は中国籍、会社秘書は中国系シンガポール人と記録されている。一方、公式サイトでは所在地をラッフルズ・プレイスの別ビルに記載し、電話番号やメールアドレスはいずれも不通だった。
ココン州では近年、オンライン賭博やサイバー詐欺拠点が急増しており、国連報告によれば正規企業を装った犯罪組織が多数活動している。警察は「不自然な条件の求人には注意し、疑わしい場合はScamShieldヘルプライン(1799)へ連絡を」と市民に呼びかけている。


