2025年8月5日
クラブでの若者の違法ベイプ使用が横行、Kポッドによる健康被害と死者も報告
オーチャードロードの地下クラブ「Drip Singapore」やクラークキーの有名クラブ「Zouk」などで、明確な禁止表示と入場時の持ち物検査が行われているにもかかわらず、若者による違法な電子タバコ(ベイプ)使用が続いている。
7月16日と18日に「Drip Singapore」でパーティー客がダンスフロアで堂々とベイプを吸い、香りのある煙を吹き出す様子が確認された。
バッグ検査が形式的なものに留まっており、小型化されたベイプは日用品に擬態したデザイン(接着剤や蛍光ペン型)で持ち込まれている。
「Zouk」でも同様の状況が続き、8月1日の再訪時にも店内での使用が確認された。没収される場面もあったが、多くは発見を免れていた。
クラブ「Zouk」の運営責任者デービッド・ロング氏は、「違反が発覚した場合は即時対応しており、繰り返し違反者には出入り禁止も含めた厳正な措置を取っている」と述べた。一方で、「荷物検査には限界がある」とも認めている。
クラークキーやプリンセプ・ストリート一帯でも、屋外でのベイプ使用が多く見られ、クラブ経営者からは「スタッフによる巡回強化」などの対策が語られた。
中でも問題視されているのが、合成麻酔薬「エトミデート」入りのベイプ=通称「Kポッド」の存在だ。これは中枢神経系に影響を及ぼし、震え、幻覚、筋肉痙攣、精神錯乱などの症状を引き起こすとされている。
TikTokでKポッドの危険性を発信する29歳のコンテンツクリエイターS・サブラージ氏は、「若者にとっては手軽なニコチン摂取手段だが、危険性は計り知れない」と警鐘を鳴らす。彼は友人のシェリル・ソーさん(23歳)をKポッド関連で亡くし、その体験をきっかけに啓発活動を始めたという。
同じく19歳のシャーマイン・テイさんも、2024年9月に自宅HDBの階下で死亡しており、父親はKポッドとの関連を指摘している。
政府も動き出しており、シンガポール保健省(MOH)は麻薬管理法に基づき、エトミデートをクラスC指定薬物に分類する法改正を進行中。違反者には、2年以下の懲役または最大1万Sドルの罰金が科される可能性がある。
違法ベイプの取り締まり強化として、保健科学庁(HSA)はクラブへの立ち入り調査を実施。5月には、コールマンストリートのナイトクラブでベイプ流通ネットワークが摘発され、5人がベイプ所持で摘発された。
現在、HSAの報告ホットラインは毎日午前9時から午後9時まで(祝日含む)稼働中で、オンライン通報も可能である。
現行法では:
ベイプの所持・使用・購入:最大2,000Sドルの罰金
販売・輸入・配布:最大6ヵ月の懲役+10,000Sドルの罰金
Kポッド所持・使用:最大2年の懲役+10,000Sドルの罰金
禁煙・禁ベイプ支援:
禁煙支援プログラム「I Quit」は保健促進庁(HPB)によって提供されており、ヘルプライン:1800-438-2000にて相談可能。
シンガポール当局は現在、ナイトライフ業界団体と連携して、違法ベイプ使用の根絶に向けた啓発活動と通報制度の強化を進めている。


