2025年8月1日
シンガポール、2026年から「搭乗拒否指令」導入へ 入国前に高リスク者の水際対策強化
シンガポール入国管理局(ICA)は、2026年から航空便、2028年から海路において、健康・治安・入国管理上のリスクが高いと判断された外国人の搭乗を未然に防ぐ「ノー・ボーディング・ディレクティブ(NBD)」を導入する。対象者は飛行機や船に搭乗する前に入国を拒否され、運送業者がNBDに違反した場合、最大1万Sドルの罰金が科される。
この新制度は2024年12月施行の「移民法改正」に基づく措置で、過去に犯罪歴により入国を拒否された人物などが対象となる。ICAはすでに顔認証や行動プロファイリングなどの技術を活用し、入国前に高リスク者を識別する能力を強化している。2025年前半には前年同期比で43%多くの外国人が入国を拒否された。
なお、陸路でのNBD導入は、バス会社に乗客情報の事前提出を求める必要があり、実現が困難と判断されて見送られた。ICAは「航空・海運では情報収集が慣例であるが、陸路では難しい」と説明している。
また、同日に開所式が行われたICAの新施設「ICAサービスセンター(ISC)」では、パスポートや身分証明書を利用者が自動で受け取れるセルフキオスクが導入され、業務の約95%がデジタル化された。書類の配送もロボットにより自動化されている。
ICAは新たな出入国管理構想「New Clearance Concept」のもと、世界で先駆けて顔や虹彩認証によるパスポート不要の出入国審査を実施。2025年6月末までに、延べ9,300万人がパスポート提示なしで出入国を済ませている。
今後は2026年末までにトゥアス・チェックポイントで自動車やバイク、貨物車向けの「自動旅客審査システム(APCS)」を導入予定。これにより職員による対面審査が不要となり、出入国時間の最大30%短縮が可能となる。
国内外の移動が活発化する中で、ICAはテクノロジーの力を活用しながら、効率的かつ高度なセキュリティ体制を整備することで、今後の出入国者増加に備えている。


