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タイ

2010年12月6日

オリエンタル・エクスプレスでマレー半島縦断の旅

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Screen Shot 2015-06-18 at 4.22.48 pmマレー半島独特の自然や人々をつぶさに記した金子光晴の『マレー蘭印紀行』などを読むと、シンガポールからバンコクまで、マレー半島を上る鉄道の旅に憧れる。それなら、紳士淑女のための贅を尽くした空間と一流のサービスに身をゆだねる、東洋一の豪華寝台列車イースタン・オリエンタル・エクスプレス(E&O)で旅をしてみたいもの。タンジョンパガーにあるマレー鉄道の始発駅、シンガプーラ駅が来年の7月からウッドランドへ移転するため、あのノスタルジックな駅舎から旅立ちたいなら、特に急いだ方がいい。

E&Oは、20世紀初頭にヨーロッパで名を馳せたオリエント急行をモデルに1982年に操業した、ベニス・シンプロン・オリエンタル・エクスプレスが成功をおさめた後、1993年よりシンガポール~バンコク~チェンマイ間を結ぶ豪華列車の旅を提供してきた。「走る5ツ星ホテル」ともいえる一流のサービスで、世界中からのゲストを魅了するこの列車の旅へと誘おう。

シンガポール~バンコク間、二泊三日の夢物語

Screen Shot 2015-06-18 at 4.23.32 pmシンガポールからバンコクを結ぶ旅は、2,160㎞の距離を2泊3日、52時間かけて行く。1932年に建てられたアールヌーボー様式のシンガプーラ駅でチェックインを済ませ、ホームへ向かうと、まずはマレーシアの入国手続きを済ませる。税関をくぐると、E&Oの最後尾であるオープンデッキが目につく。濃いグリーンとクリームカラーの、まるで貴婦人のような美しい車両は、ニュージーランドを走ったことのある70年代の日本製の寝台車両を改装したもの。最大22車両、乗客132人を乗せる。東南アジアで最長の旅客列車であり、唯一ラグジュアリーな鉄道の旅を提供する。

ずらりと並んだスチュワード達に迎えられ電車に乗り込む。隅々までピカピカに磨かれた真鍮の金具、職人によって施されたローズウッド、ニレの木などの車両内とキャビンの装飾、大きめのタッセルで留められたシルクの織布のカーテン。コンパクトにまとまったバスルームには、ブルガリのアメニティーが置かれている。その贅沢な空間に身をおくと、この上ない旅情が湧いてくる。

マレーシア国境までのシンガポールの線路沿いには、50年代からあるような電柱が電線をつなぎ、ブキティマの鉄橋を音を立てて渡るノスタルジックな風景もある。ウッドランドでシンガポールの税関を通り出国手続きを済ませて列車に戻ると(マレーシアの税関はシンガポール駅にあり、出入国があべこべである)、ランチへ招待される。3コースの本格フレンチを楽しみながら、ジョホールへと渡る。マレー半島特有のナツメヤシ、パイナップル、ゴムのプランテーションを走る抜ける間、午後はゆったりと時間が流れる。ゲストもそれぞれキャビンでくつろいだり、最後尾のデッキから濃い緑の茂みを眺め、見慣れない南国の鳥などを目で追いかけたりと様々だ。キャビンに運ばれてくるアフタヌーンティーを頂きながらの車窓の風景もまた格別。

道中、列車内で手相占い、フットマッサージ、E&Oのオリジナルグッズの買い物をしたり、居心地の良いバー・ラウンジで早めのアペリティフを楽しみながら異国からの他のゲスト達と談笑するのもいい。

ディナーは、盛装でダイニングカーへ。E&Oならではの華やかな一場面だ。ひと際美しいダイニングカーのインテリア、テーブルセッティング、そして、そこに供されるコース料理の数々。アジアでの経験が長いフランス人シェフは、本格フランス料理の中に、目の前を通りすぎる土地の風味を少しずつ加えて、美しい盛り付けと共にゲストの五感を満たしてくれる。選りすぐりのワインを頂くこの頃には電車の震動も心地良くなるだろう。食事を終え、バーから聞こえるジャズピアノに耳を傾けながらキャビンに戻ると、上質のリネンのベッドが整えられており、翌日タイの国境を越えながら眺める車窓の風景に思いをはせながら、眠りに就く。そして、24時間アテンドしてくれる担当スチュワードが、個々のキャビンに朝食を運んでくれることで、ゆるりと目覚める翌朝、この贅沢な時間を更にもう一日楽しめるというこの上ない喜びを感じることになるだろう。

旅の間の途中下車は、計3回。初日の夜、クアラルンプールで1時間ほどと、2日目の午前中にバターワース駅で下車し、フェリーでペナン島に渡ってジョージタウンを散策、そして3日目にタイのカンチャナブリでクワイ川にかかる橋を訪れる。

ノスタルジックな旅の終わりに

Screen Shot 2015-06-18 at 4.23.51 pm3日目、カンチャナブリを出ると、旅の終わりが近づき、すっかり顔なじみになったフレンドリーなスタッフや車掌役のトレイン・マネジャーへの名残惜しさも募る。スタッフの連携のよさ、上質なサービスの徹底の秘密について、E&Oが走り始めたころから同職を務めているU.ブシャール氏は、「それぞれが最高のサービスを提供しようと一丸となっています。皆勤続年数が長く、家族のように助け合うことを厭わないチーム意識の高さが秘訣です」と語ってくれた。

ヨーロッパの駅を模した壮大なバンコク駅に到着すると、まず荷物が運び出され、スチュワードにも別れを告げる。ホームをゆっくり進むと、先頭にはブシャール氏以下、ずらりとスタッフが並び、ゲストひとりひとりを見送る姿がある。

人生を豊かにしてくれるのが旅であるなら、オリエンタル・エクスプレスで経験するひと時は、間違いなくそれを叶えてくれるはず。ゲストが心地よく旅するための空間が、多くの人の手によって妥協なく丁寧に作り上げられているからに他ならないのだ。

 

 

 

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アユタヤについて~川を上ると、歴史もさかのぼる

「王の川」という名のチャオプラヤー川の上流、バンコクから55km先に、14世紀から400年続いたアユタヤ王朝(1351年~1767年)の首都アユタヤがある。王宮や寺院を中心としたアユタヤ遺跡群は、チャオプラヤー川とその支流であるパーサック川、ロップリー川に囲まれた中州に集中している。アユタヤ王朝は、中国とインド、ヨーロッパ方面を結ぶ中間に位置し、日本を含めた東アジア、東南アジア島嶼部、アラブ・ペルシア方面や西洋と活発に貿易を行って富を蓄えた。朱印船貿易でやってきた山田長政をはじめ、1500人ともいわれる日本人が日本人街に暮らしたほか、ポルトガルやオランダ人の居住区もあったという。アユタヤでは当時繁栄していたカンボジアのクメール文化を吸収しつつ、中国、ヨーロッパ、ペルシャなどの影響を受けた独自の華やかな文化が開花した。隣国ビルマからの攻撃によって王朝は終焉を迎え、王族と民は川を下り、新たな都をバンコクにほど近いトンブリに建てたため、抜け殻となった遺跡に華やかさはないが、残された遺跡の輪郭は、逆に想像力を掻き立てる。

1991年にユネスコ文化遺産に指定されて以来整備が進み、夜間には遺跡にライトアップがともり、その幻想的な姿が美しい。また、ゾウに乗りながら遺跡を眺めたりと、ノスタルジーを盛り上げる演出もいろいろ揃っている。

チャオプラヤー川クルーズでアユタヤへ

バンコク~アユタヤ間を豪華大型クルーザーでいく3時間半のクルーズ。バンコクの船着き場は、シェラトン・ロイヤルオーキッドホテルのそば。クルーザーはゆったりとしたつくりで、モーニングコーヒー、タイ料理のブッフェを提供する。200mの川幅があるため、水面も穏やかで、暁の寺ワット・ポーや、王宮といった名所、水上バスで川を行き来する人々の日常をのんびり眺められる。快適にアユタヤへ到着し、午後よりアユタヤ遺跡の見学へ向かう(午前中バスでアユタヤへ向かい、遺跡見学後、午後船でバンコクへ戻るコースもあり)。

アユタヤ主な見どころ

バンパイン宮殿

p08アユタヤ王朝時代に築かれた夏の離宮を再建したもので、池中の美しいタイ様式のパビリオンの他は、ルネサンスやロココ様式など西洋風の建物が点在する。また、タイ国中華総商会から寄付された明天殿は、中国風の宮殿で螺鈿細工などの装飾も見事。近年建てられたばかりの豪華な西洋式の皇太子の宮殿など、現在も王族が利用している。以前は川を上って運河を下り訪れた王族も、現在は陸路で訪れるというが、タイの王族の豊かさがうかがい知れる場所のひとつ。

ワット・プラ・マハタート

p09アユタヤ朝初期の13世紀の名残りある寺院。13世紀の重要な寺院の一つで、アンコールワットに見られるクメール様式のとうもろこしに似た塔が残っている。かつては塔の頂上が黄金色に輝いていたという寺院も1767年のビルマ軍の侵略で焼け落とされたため、往時の面影は残らず、崩れ落ちた煉瓦の壁や境内の土台が残るのみで、現在寺院としての機能もない。切り落とされて長く放置され、木の根の間に埋め込まれたように見える仏像の頭が有名。

ワット・プラ・スィー・サンペット

p10セイロン様式の仏塔(チェディー)が時代の繁栄を偲ばせる、歴代3人の王が眠る仏教寺院。アユタヤ王朝では、王と仏が同一視されていたためワット(寺)と呼ばれるが、宮殿の一部で、後にアユタヤで最大規模の王室専用の仏教儀式を行う場所となった。ワット・マハタートと同じくビルマ軍の侵略により、黄金仏像も黄金を張り巡らせた寺院もろとも破壊され、今は歴代3人の王の遺骨を納めた仏塔がわずか3基残るのみ。とはいえ、大きな破壊を受けた他の仏塔遺跡と比べ、漆喰などが当時の状態をよく保っており、アユタヤ時代の建築をそのまま見ることの出来る貴重な遺跡でもある。

遺跡の隣に、アユタヤ王朝以前からあるといわれるワット・パナンチュンがあり、大きな仏像が祀られている。こちらは今でも大勢の人が参拝に訪れている。


由緒正しいバンコク、チャプラタヤ川沿いにステイ

ロイヤルオーキッドシェラトンホテル&タワーズ

p11全室リバービューという贅沢な配置と、2009年に全面改装となり、最新の設備で一層快適になった部屋がビジネスマンにも観光客にも人気のホテル。また、世界中のシェラトンで標準装備のシェラトンスイートスリーパーベッドが心地よい眠りを約束してくれる。高層階に泊まると、より広い両岸の川の眺めが楽しめ、夕暮れ時、早朝など街中に輝く寺院などが美しい。館内には、イタリアン、タイ、インドネシア料理、それぞれの本格レストランがあり、川沿いのテラスでゆったり食事ができる。高い技術力で知られるマンダラスパもある。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.180(2010年12月06日発行)」に掲載されたものです。
文= 桑島千春/写真=Jean Qingwen Loo

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