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経済

2019年10月16日

20年度予算案を発表、景気刺激に重点

 
 リム・グアン・エン財務相は10月11日、国会で2020年度予算案を発表した。歳入と歳出を前年より低く抑える一方、米中摩擦の影響による輸出低迷で景気冷え込みが予想される中、公共投資を厚めにする。投資誘致に向けた優遇策も複数盛り込むなど、景気刺激に重点を置いている。各紙が報じた。
 
 歳入は前年比7.1%減の2445億3000万リンギ、歳出は6.0%減の2970億2000万リンギに設定。財政赤字の国内総生産(GDP)比は3.2%で、以前公表していた3.0%より高めた。ただ今年見込みの3.4%からは縮小させる意向。中期的には平均2.8%を目指すとしている。
 
 公共投資予算は560億リンギで、前年から4.3%増やす。クアラルンプールの大量交通システム(MRT)やボルネオ島のパン・ボルネオ高速道路の建設などで運輸部門の予算を前年から8.8%拡大させる。リム財務相は「外部環境が想定より悪い場合には、(公共投資拡大などで)景気を刺激する必要がある」と述べた。
 
 全国一律で月1100リンギの最低賃金については、来年から主要都市で1200リンギに引き上げる。また不動産市場の在庫だぶつきを解消するため、外国人が購入できる高級物件の最低価格を現在の100万リンギから60万リンギに引き下げるとしている。
 
■GDP成長率、やや加速想定
 
 予算案策定に当たり、20年のGDP成長率は4.8%を想定。19年見込みの4.7%からやや加速するとみている。インフレ率は2.0%を想定しており、19年見込みの0.9%から上昇すると予想。消費伸び率は4.8%を想定。輸出伸び率は1.0%と低率を見込むが、今年の0.1%からは拡大するとみている。
 
 20〜22年の原油価格は1バレル当たり平均60〜65米ドルを想定。20年の国営石油ペトロナスから国への配当は240億リンギを見込む。
 
■中国企業誘致に意欲
 
 投資誘致に向けた新たな優遇策は来年1月1日までに最終化させる。電気・電子産業に対する10年間の法人税免除を検討しているほか、世界に物やサービスを輸出する大企業を呼び込むため、こうした企業を対象に向こう5年で年10億リンギ規模の投資優遇策を実施する方針。また、中国企業が投資を容易に行えるための施策「スペシャル・チャンネル」を来年1月に開始する。
 
 アブラヤシ再植林向けの融資基金には5億5000万リンギを確保。軽油にパーム油由来のバイオディーゼル燃料(BDF)を配合した混合燃料「B20」は20年末までに運輸業で義務化し、パーム油消費量を年間50万トン引き上げる考えだ。
 
 ■個人所得税の最高税率引き上げ
 
 歳入面では、一部でうわさされていた物品・サービス税(GST)の再導入は行わない。一方、円建て国債(サムライ債)を表面利率0.5%以下で発行。また財政再建に向け、30億リンギ相当の政府資産売却を進める。個人所得税については最高税率を引き上げ、年収200万リンギを超える部分については現行の28%から30%とする。
 
 シンガポールの大手銀行であるUOBのアナリストは、今回の予算案を高く評価。米中摩擦で逆風が吹く中、財政を悪化させない範囲で投資や雇用、生産性の増加・向上につながる施策が明確に示されたとしている。一方で野党からは、今回の予算案は資本家に寄り添った内容が多く、貧困層が軽視されていると批判の声が上がっている。
 
(提供:亜州ビジネスASEAN

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