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社会

2019年10月14日

母乳は調合乳に勝る、医師2人が勇気ある発言

 
 母乳で育った子どもは乳児用調合乳で育った子どもより知能がいくらか高く、感染症にかかりにくく、成人したのちは肥満、糖尿病になるリスクも低い――シンガポール総合病院(SGH)の産科医師2人が勇気ある発言を行った。乳児の栄養には調合乳が優先されるべき、という医師や一般大衆に「広く信じられている偽りを暴きたい」との願いから、医学アカデミーの定期刊行物「アナルズ」に寄稿した。
 
 2人は、ヨン・ツェテイン医師(SGH産婦人科部長)とヤン・リイン医師で「医者は事実を知り、母親が正しい判断をする手助けをするべき。選択は母親に任せるべきだが、医者がこの問題についてよく知らないまま、母乳保育をする妨げとなってはならない」と述べた。
 
 両氏によると、新生児は誕生後数日は体重が減少するが、母乳が十分出ていないと思い込み、早々に母乳をやめてしまう母親が多い。しかし出産後数日は母乳分泌量が少なく、新生児が3~4日の間に体重が5~7%減るのは自然なことだという。
 
 母乳には免疫力を高める成分が含まれており、肺、消化器官、耳の感染症から守ってくれる。調合乳にはこうした成分はなく、調合乳で育った子どもは長期的に、糖尿病、白血病のリスクが高まるという。
 
 医学誌ランセットに掲載された、3,500人の新生児を対象にブラジルで行われた調査は1982年から30年がかりのもので、1年かそれ以上母乳で育った人は、母乳が1カ月未満だった人と比べIQが3.78ポイント高く、より高い教育を受け、給与も高かったとの結果が出ている。また、母乳をやることは母親にとっても望ましい。出産後の出血が少なく、1年以上母乳を与えた女性は、母乳を与えなかった女性より卵巣がんになる可能性が33%低い、という。
 
 シンガポールでは、少なくとも6カ月、母乳で育てている母親は1%以下(2011年調査)。SGHの2人の医師は「社会が母乳育児をサポートする必要がある。乳房を性的対象とみるのをやめるべき」と述べた。

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