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日系企業・社会

2018年6月21日

JCCI、NWCガイドライン説明会・賃金調査結果報告会を開催

シンガポール日本商工会議所(JCCI)は6月20日、シャングリラホテルでシンガポール政府・労働組合・雇用者で構成する評議会「National Wages Council」(以下NWC)が決めた労働者の賃金設定等に関する2018年NWCガイドライン説明会及び、JCCI法人会員へのアンケート結果を通じてまとめた2018年JCCI賃金調査結果報告会を開催した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめにJCCI賃金調査委員長の林久順氏(キッコーマン・シンガポール)が登壇。ガイドラインについて「法的拘束力は持たないが、内容は公開され広く報道される。実質的には他のガイドライン同様に効力がある」と位置づけを説明したうえで、「長期にわたる生産性向上に合わせた実質賃金上昇を維持」を掲げる2018/2019ガイドラインの骨子について①低賃金労働者に対応 ②下請け低賃金労働者への配慮 ③高齢者雇用・仕事に復帰する女性雇用の促進――を挙げて紹介。

 

このうち、①に関しては、▽定額+定率の組み合わせによる自動昇給を契約に組み込む ▽基本給1,300SGD以下の労働者に対しては50~70SGD以上の自動昇給実施、生産性向上達成企業の一時金を奨励(300~600SGD) ▽基本給1,300SGD以上の労働者に対しても公平・妥当な昇給、一回限りの一時金の実施――を勧告していることを紹介した。

 

また、今年新たに導入された仕事に復帰する女性雇用促進については、「次年以降の展開が注目される」と指摘した。

 

次いで、ラジャ・タン法律事務所の上野美代子弁護士、大塚周平弁護士が「予定される雇用法改正・労務法規制の最新事情」をテーマに説明を行った。この中で、「シンガポール雇用法の改正により2019年4月から適用対象範囲が変更される予定だ。これまで適用外だった4,500SGD以上の管理職を含む全従業員が適用対象になる」ことなどを紹介した。

 

また、就労ビザについても言及し、労働力の3分の2をローカル労働力で占めることを目指す「シンガポール・コア」政策のもと、EPビザの発給審査が厳格化していることを紹介。「シンガポール・コア」の姿勢を見せない企業はウォッチリストに掲載されることを強調した上で、「2016年2月から2018年2月までの間に500社がリストに入った。常時300社が載っている。そして1,900件のEP申請が拒否された」と状況を説明し、シンガポール政府による外国人社員をローカル人材への代替を促す取り組みに伴う外国人雇用を取り巻く環境について解説した。

 

次に、JCCI賃金調査委員の荒屋貴氏がMOM(人材開発省)統計をもとに「シンガポールの労働市場と雇用状況」について説明。2018年3月時点の総雇用件数は367万3,100件で、12月時点に比べ3,500件増となっていること挙げ、「昨年中は366万件台で推移してきたが、回復してきている」と紹介した。一方、2018年第1四半期(1~3月)の雇用数増減は3,700件の増加を記録したが、「外国人労働者(ワークパーミット保持者)の減少が続いている建設業と製造業のマイナス分を、外国人メイドを含むサービス業の増加で補っているのがここ数年の形だ」と指摘した。

 

また、2017年通年の雇用数増減に関しては外国人メイドの増加分を含めてもマイナス3,600件で、これを除くとマイナス1万700件となっていることを示し、「通年の数字がマイナスになったのは2003年(マイナス1万1,700件)以降では初めてだ」と強調した。ただし、その要因については「ローカル(シンガポール国民とPR)の雇用は2万1,300件増となっている。その一方で、メイドを除く外国人はマイナス3万2,000件と大幅に減少している」ことを指摘し、「2003年以降はじめてのマイナスの原因はメイドとPRを除く外国人の雇用が大きく減ったことだと分かる」と解説したうえで、外国人の雇用が大きく減ったことについては「MOM は建設業と造船業のワークパーミット保持者が減少したことが主な原因だと説明している」と補足した。

 

18年3月時点の失業率(季節調整値)は2.0%で、17年12月時点の2.1%に比べさらに改善したことを紹介。このうち年齢別、学歴別では、「30歳以上」および「大学、短大、高専卒」に相当する層の改善が目立っていることを挙げた。

 

解雇の動向に関しては、昨年第4四半期(10~12月)には3,680件だったリストラが、今年第1四半期(1~3月)には2,320件へと大きく減少したことを紹介し、「これは2013年第1四半期(2,120件)以来の低い数字だ。件数の減少はほぼすべての業種に及んでいる」と説明した。また、年間の解雇件数についても「リーマン・ショックの2008年(1万6,880件)を超える1万9,170件を記録した2016年から、昨年は一気に1万4,720件まで減少した」と強調した。

 

求人数については、昨年12月時点の4万9,700件から今年3月には5万3,900件へと増加し、2015年12月(5万4,000件)と同水準にまで回復していることを説明。「失業者数の減少とも相まって今年3月の求人倍率(季節調整値)は1.04となり、16年3月(1.03)以来、久しぶりに求人倍率が『1』を超えている(求職者数よりも求人数のほうが多い)」と話した。

 

また、勤務時間と残業時間については、18年3月の平均週間勤務時間は44.8時間、平均週間残業時間は2.8時間で「毎年コンスタントに短くなってきている」と傾向を分析した。

 

続いて、JCCI事務局長の清水僚介氏がJCCI法人会員335社からの回答をまとめた「2018年賃金調査結果報告」の内容を紹介。2018年の予測昇給率は3.28%で昨年実績とほぼ横ばいで推移するとの見通しを示した。

 

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