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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2014年3月17日

シンガポールの宅建法

シンガポールには独立以来長い間、不動産エージェントを規制・監督する体系的な法律がありませんでしたが、大きな消費者被害を伴う相次ぐ不祥事を契機に、2010年に Estate Agents Act が制定されました。消費者の皆様に関連する主要事項は以下の通りです。

1. 宅建免許保持者のみが不動産仲介業務を行える

シンガポール政府が実施する宅建主任者養成講座の受講を完了のうえ、資格試験に合格し、かつ、政府の審査(犯罪履歴チェック等)にパスし免許を交付されたLicensed Real Estate Salesperson のみが、不動産仲介業務を行えます。日本の場合は、営業担当者の5人に1人が有資格者であれば良いのに対し、シンガポールでは、全ての営業社員に免許保持が義務付けられています。シンガポールの宅建資格が、日本の5倍難しいと言われる所以です。

また、HDBと民間不動産の仲介資格が一本化されて以降、外国人にとってはハードルがより高くなっています。違反者には、7万5,000Sドル以下の罰金、または、3年以下の禁錮刑、あるいは双方という厳罰が課せられます。政府所定の免許証を首から下げていない無資格者には、付いていかないことが肝心です。

 

2. 専任の監督官庁(Council for Estate Agencies ;CEA) が発足

仲介業者に関わる消費者からの苦情受付窓口があり、苦情解決、調停、悪徳業者やエージェントの処罰も行っています。エージェントとのトラブルに巻き込まれた際、時として、裁判所以上に頼りになる存在です。 (WEBサイトwww.cea.gov.sg

3. 主たる禁止事項(不法行為)

ⅰ. エージェントによる金貸し業務や立て替えの禁止

契約の任意性に疑義を引き起こさせ、あるいは、反社会勢力の介在に道を開くため、厳禁事項のNo.1 。「業者さん、立て替えて!」もご法度です。日本でも、同様。

ⅱ. エージェントによる利害相反行為(双方代理)の禁止

同じエージェントが、売主(または家主)のエージェントと買主(または借り主)のエージェントを兼務することが禁止。日本では、禁止されていません。

ⅲ. エージェントが顧客から現金を受領することの原則禁止

ただし、印紙税分については、適用除外。

ⅳ. 不当広告の禁止

売主(または家主)の事前許可を得ていない広告やおとり広告等。CEAはネット上の広告も取締りを強化していると言明。

4. 新たな義務事項

ⅰ. 仲介業務に関わる関連書類の4年間保管を義務付け

ⅱ. 政府指定条件での、過失賠償責任の付保義務付け

消費者保護法、個人情報保護法なども含めて、消費者利益の保護について、シンガポール政府は、従来の自由放任から規制・監督強化に大きく舵を切りつつあります。また、免許制の強化については、金融商品販売業、人材業、はたまた、私塾などとも、軌を一にしているものと思われます。

 

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.253(2014年03月17日発行)」に掲載されたものです。

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