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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2012年11月19日

入居の際の注意点

1. 「ちょっと、押さえておいて……」は通じない

日本では、気に入った物件があると、不動産屋さんに「ちょっと、押さえておいてください」ということがよくありますが、当地ではまったく通じません。

2. まずは手付契約

1ヵ月の手付金を支払い、「手付契約」を完了して、それで初めて仮押さえできます。手付契約は、「仮契約」とも呼ばれ、英語ではLetter of IntentあるいはOption to Leaseといいます。家賃・契約期間を含め、契約の主要事項を記載したLetter of Intentを借り手側エージェントが2通作成し、借り手が署名、手付金(Holding Deposit)である家賃1ヵ月分の小切手と一緒に家主側に提示します。それを家主が受け取り、承諾(Acceptance)署名の後、1通を返却してきてようやく手付契約が完了します。

3. 借家法はなく、契約内容が全て

日本のように個別契約に優先して借手を保護する借家法はありません。契約内容を一文・一語よく確認してください。また家主が本当の所有者かどうかも、事前に確認しましょう。

4. 借主の手付流しはあるが、家主は倍返し解約はできない

「手付契約」後、通常1週間~10日以内に、本契約書であるTenancy Agreement(賃貸借契約書)が締結できないと、「手付契約」無効になります。借主の単なる心変わりの場合には手付金は戻ってきませんが、本契約書の条件詳細で合意できなかった場合には、無利息で手付金が借り手に返金されるのが通常です。日本とは異なり、家主側からの「倍返し解約」はできません。

5. 当初準備するのは、家賃3ヵ月分+印紙税

手付金1ヵ月+本契約時2ヵ月+印紙税(数百ドル。法定)=家賃3ヵ月分+印紙税が、当初必要な金額です。なお賃料S$4,000未満の契約や、期間2年未満の契約の場合のみ、これとは別に不動産仲介手数料が半月~1ヵ月分かかります。家主への礼金制度はありません。家主に支払った計3ヵ月分の家賃相当額のうち、2ヵ月分は敷金に、そして残り1ヵ月分は初月家賃になります。

6. 入居・引き渡し

入居・引き渡し時には、アパートの内部状況と家具備品の確認を行います。その際のInventory List(備品一覧)は、いわばB/L(船荷証券)のようなもので、すべてを問題(瑕疵)無く受け取ったと署名してしまうと、満期退去時に「当初から傷があった」うんぬんと主張しても認められません。気付いた点はリストにただし書き(remark)を付記しましょう。

7. 必ず証拠写真を撮って保存する

入居して気づいた傷・シミなどありとあらゆる不具合などは、とにかくデジカメで日付を入れて撮影・保存しておきます。重大と思われるものは、家主にも報告します。データ保存は、エージェントや会社の担当者任せとせず、自らでも保管した方が安心。なお写真は、“いかに借主が汚損したか”の証拠写真にもなりうるのでご注意を。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.224(2012年11月19日発行)」に掲載されたものです。

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