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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2014年6月16日

増加する日系企業のオフィス拡張・移転

1. 日系企業のオフィス拡張・移転が増加

最近、新規進出日系企業のみならず、既存企業のオフィス拡張や移転が増えている。背景には、アベノミクス効果などにもよる業況の改善や、また、海外市場、特にASEAN諸国を重視する本社の積極策があるようだ。

2. 主な移転理由

移転の理由として多いのは、以下のようなこと。従業員の増加に伴い物理的に手狭になった。顧客アクセスも考え、交通の便の良いところに移転したい。賃料の値上がりが予想され、比較安価な物件に転居したい。設備の老朽化。取り壊し・再開発が検討されているようなので、突然追い出される前に先手を打ちたい……などなど。

3. オフィス選定=ビジネス拠点選定

戦国武将に例えれば、戦略的要衝に城を築くのと同様。単にハコモノの入れ替えではなく、ビジネスにプラスとなる物件の積極的選定が肝要。住宅探しと違いオフィス移転は「会社の一大事」。求められる諸条件に優先順位をつけ、移転目的を明確化することが、満足度の高いオフィス選定につながる。

4. 準備期間は十分に

内装工事を伴うので、小規模オフィスであっても、6ヵ月前には選定作業に着手しないと慌ただしい。フロア単位の大規模移転だと、移転先候補も限られるため、1年前には要着手。もともと狭い国土で、物件数も限られるシンガポールのこと、気になる物件は全てチェックしよう。

5. オフィス移転の典型例

A社:
Regional HQ(地域統括本部)の位置付けで、優秀な職員を採用しやすいように交通至便な中心部物件を選んだ。Raffles Place-Marina Bay-Tanjong Pagar地区の物件の中から取捨選択した。

B社:
コスト・パーフォーマンスを重視、但し、通勤が不便でも困るので、Buona Vistaの新築ビルを選んだ。東西線とサークルラインが使えて便利。

C社:
業務の大半は事務作業だが、テスト機器を導入しWet Laboが必要となるため、法令上の要件もありScience Parkを選んだ。

D社:
老朽ビルは避けたい。但し、高額な賃料も払いたくない。周辺国も所管するため出張も多く、比較的安価ながら新しく、空港にも近いTampines駅前のオフィスビルを選んだ。

E社:
入居しているオフィスビルの再開発計画が浮上し、これを機に、自社品の修理・サポートもできる工業ビルに転居。オフィス部分は面積の4割以下のため、認可の問題もなく、また、幸いにも、製品の入れ出しにも容易な1階が確保出来た。

F社:
家賃高騰もあり、中心部物件はあきらめていたが、たまたま、Clarke Quay 近くで公立学校旧校舎がオフィスに改装されて、安価で転貸されていた。Somerset駅までシャトルバスもあり、迷わずそこを選んだ。

G社:
JTCとの工場リース契約を更新せず、営業拠点としてのオフィス・スペースをLabrador Parkに賃貸。商品の在庫管理は、物流会社に委託した。

H社:
シンガポール全島に物販店を展開。バック・オフィスは旗艦店に近いOrchard Roadを検討したが、賃料が高いため、MRTでのアクセスも、ほぼ遜色ないHarbourfront Centreを選択。

6. オフィス賃貸市況

2014年、2015年は、再開発目的の取壊し案件が多いこと、さらに、この間の竣工物件が限られるため、家賃上昇が見込まれるが、余り長続きはせず、供給が増える2016年以降は、相場反転下降と言われている。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.259(2014年06月16日発行)」に掲載されたものです。

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