シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『エンジェル』石田衣良

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2004年8月3日

『エンジェル』石田衣良

photo-17「4TEEN」で直木賞を受賞した石田衣良の作品。殺害され幽霊となった主人公が、犯人に狙われる恋人を守るべく奮闘する話だ。こうあらすじだけ述べると「映画『ゴースト~ニューヨークの亡霊』に似てない、それ?」と思われる方も多いかもしれない。しかし材料が同じでも料理人の腕によって味は変わるように、似たテーマであってもミステリー風味に味付けされ、石田色が良く出ている。特に前半で主人公の過去がプレイバックされていく構成が絶妙。ある程度結末が読める展開ながらも、前半で主人公に親近感を持ってしまったがために、つい引き込まれて読み進めた方もいるだろう。ミステリーかつファンタジーという他の石田作品とは気色の違う本書だが、他作品同様スピード感溢れる文体は変わらない。テンポ良く読める佳作だ。

 

集英社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.005(2004年08月03日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール本店 古矢

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