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紀伊国屋「おすすめの1冊」

2004年8月10日

『攻撃計画―ブッシュのイラク戦争』ボブ・ウッドワード

photo-16『ブッシュの戦争』のボブ・ウッドワードがおくる衝撃のノンフィクション。今年4月に発売された原書(PLAN OF ATTACK)は世界中でベストセラーとなった。

 数ある「ブッシュ本」と一線を画しているのは、その取材力。大統領本人へのインタビューを始め、秘密会議や盗聴防止機能付き電話での会話までもが明記されている。その膨大な量の機密情報に驚き、ホワイトハウスは即座に情報源の犯人探しを始めたといわれる。

 また本書の魅力は、ブッシュ本人と最高幹部たちの人物像が実に鮮明に描写されている点であるといえる。前半の主役は、ラムズフェルド国防長官。9・11から早くも2カ月後、ブッシュから対イラク戦争計画策定を命じられ着手する。チェイニー副大統領は、フセイン打倒に異様なほどに執念を燃やす。そしてあいまいな情報を根拠に、イラクに大量破壊兵器が存在することを大統領に保証したテネットCIA長官。さらに孤立しながらも国連との協調を最後まで唱え、武力行使を回避する可能性を探るパウエル国務長官の描写も興味深い。それぞれの立場と信念を持った人物が、ときには感情をむき出しにしながらそれぞれ議論を交わしていく。

 ブッシュ・シニアのやり残したフセイン打倒という使命は、9・11やアルカイダとは関係なく、すでにブッシュの念頭にあった。意外にも、彼は慎重に戦争開始の決断を下したとして評価する向きもあるが、イラク国民や若い兵士の死を憂いその信念が揺らぐようなことは、残念ながら一瞬としてなかったようだ。

 

日本経済新聞社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.006(2004年08月10日発行)」に掲載されたものです。
文=親松

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