シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『海の帝国—アジアをどう考えるか』白石隆

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2004年10月18日

『海の帝国—アジアをどう考えるか』白石隆

photo-5赴任先の政治、経済、歴史、人々の暮らしを知ることは大切なことだ。これによって仕事や日常生活が不便なく進むことがあり得るからだ。ここシンガポールでも「ビジネスガイド」「生活便利帳」から「観光ガイド」まで色々な種類のガイドブックや関連書が入手可能である。当地で仕事や生活をする上で最低限のことならこれらのガイドブックや関連書で充分だろう。

さて、日常生活に直接役立つことは無いかもしれないが、本書を通して当地の歴史に思いを馳せてみるのは如何だろうか。最初の数章を読むだけでも十分に興味深く、シンガポールの歴史を把握するのに有益である。「歴史博物館」や「アジア民族博物館」の見学を兼ねればイメージはもっと膨らむことだろう。

更に本書を読み進めればきっと知的な興奮を味わうことができるに違いない。本書を支えるキーワードは「海のアジア」。それは外に広がる交易ネットワークで結ばれたアジアだ。その中心は中国、英国、日本と変遷してきたが、海で結ばれた有機的なシステムとして機能してきた。世界秩序が変貌する中で日本はこのシステムとどのように係わるべきなのか。本書はタイ、インドネシア、フィリピン、シンガポールといった具体的な近代国家の形成過程をコンパクトに提示しつつ、アメリカの存在や中国の将来と絡めてこの問題を解く鍵を提供している。先ずはご一読ください。

 

中公新書

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.016(2004年10月18日発行)」に掲載されたものです。
文=秋山

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