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紀伊国屋「おすすめの1冊」

2005年4月11日

『日本国債』幸田真音

photo-1小難しそうでちょっと避けていたのだが、意外に面白くて一気に読めた。と同時に、嫌なことを思い出してしまった。日本という国が債務超過に陥っているという事実だ。自転車操業を続ける日本とそれを支える日本国民。それを理解している人は何人いるのだろうか。国の借金を背負うのは我々の世代であり、我々の子の世代へと引き継がれていく(子どもいないけど)。

但し、ミステリーとしては二流。描き切れていない部分が多く、最後まで明らかにならない点が多い。古賀や間宮、会田、高見など、描きようによっては非常に魅力ある人間を登場させているのに、十分な人物描写ができていない。大掛かりな犯罪を絡めずにディーラーたちの世界を描くことに特化して物語を紡ぐことができていたら、もっともっと面白い小説になっていたかもしれない。

ちょっと手厳しくなってしまったが、最初に言ったように決して面白くないわけではなく、馴染みのない世界に少し触れてみることができる小説、それがこの「日本国債」だろう。

 

講談社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.039(2005年04月11日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見

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