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紀伊国屋「おすすめの1冊」

2005年12月19日

『ずぶとい国、ずるい国、そしてバカな国―「学級崩壊」する国際社会!』落合信彦

photo-10本書は小学館刊「SAPIO」に連載された「新世界大戦の時代」に加筆・再構成を施したもので、2005年の国際情勢分析といった内容になっている。先ず、現在の国際社会を「学級崩壊」に例えている点が面白い。国際組織のルールすら守れないのに要求だけは声高に叫ぶ国家が跋扈した結果の国連形骸化。また、国際社会が「話しても解決できない」時代に突入し、例えば、イラク戦争決議での米欧の対立、北朝鮮核開発をめぐる六カ国協議の混迷、EU憲法の否決など、多国間協調主義が破綻に直面している、としている。「9.11」、米国同時多発テロを境に従来の外交・安全保障政策を大幅に見直した米国。この変化に対応する形で超大国化路線をひたすら走る中国。そして2004年11月のPLOアラファト議長死去後、中東問題の当事者の間で起きているパラダイムの変化。その他、中国、中央アジア、ロシアをめぐる情勢をはじめ、日本の国連常任理事国加入問題やイラク自衛隊派遣問題の取り扱いがマスメディアを通した報道から受ける印象とは異なり新鮮さを感じる。欲を言えば、昨今経済成長著しいインドや「米国の裏庭」中南米諸国についても何らかの言及が欲しかったところであるが、マスメディアを通した報道だけではなかなか理解しづらい国際情勢について新鮮な見方を提供しつつ一気に読める1冊としてお勧めの書籍です。

 

小学館

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.065(2005年12月19日発行)」に掲載されたものです。
文=秋山

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