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紀伊国屋「おすすめの1冊」

2006年3月6日

『バスジャック』三崎亜記

photo-5嫌いではなかったがよくわからなかった。これが三崎亜記の前作「となり町戦争」の感想。非常にユニークな作品だったが、結局何が言いたかったのか理解できなかった。本書は2作目だが、最初、買って読むつもりはなかった。今年に入ってからまだ小説は1冊しか読んでいなかったのと、これといって読みたいものがなかったのが重なって、ちょっと手にとってみたというのが正直な経緯。因みに長篇ではなく短篇集。本書も相変わらず「えっ?」と思うところがあり、現実感のない話ばかり書いているので、波長の合わない人には面白くも何ともない。現実感がないというよりも、現実にはない話と言った方が正確か。順序正しく最初の短篇「二階扉をつけてください」を読むと、あまりにも突拍子がなく、他の作品を読む気がなくなってしまうかもしれないので、とりあえず飛ばして読んだ方が無難。これを読むとどうしてもドラえもんを思い浮かべてしまうし、他の作品もそうなのではと身構えてしまう。それにしても展開が途中でわかってしまうような、「バスジャック」が表題作になっているのは理解不能。見た目のインパクトを考えてだろうか。個人的には「二人の記憶」と「送りの夏」が面白かった。特に「送りの夏」だが、これだけでも買った甲斐があったと思わせる作品。

 

集英社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.069(2006年03月06日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見

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