シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『熊の場所』舞城王太郎

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2006年4月3日

『熊の場所』舞城王太郎

photo-3いまだになぜ自分は舞城王太郎を読んでいるのかがわからないのである。改行が少ないから読みづらいし、エログロであったり暴力的な表現多いし、そもそも話の筋がめちゃくちゃだったりするし。特にトリックがトリックになっていない『煙か土か食い物』なんかはミステリー好きの人が見たら卒倒してしまうかもしれない。良い点を挙げるとすると先の展開が読めない点とスピード感リズム感あふれる文体としか言い様無かったりするわけで、そうするとアマゾンやその他のネット上で溢れている舞城作品書評と違いが無くなってしまった。私の筆力不足である。つまるところ舞城王太郎の魅力を語ることが出来ていないわけだが、それでも敢えて舞城王太郎作品を1点オススメしたい。それは彼の作品の中でも読みやすいといわれている『熊の場所』。表題作『熊の場所』を含む全3編を収録した短編集である。少年が猫殺しの友達を観察する『熊の場所』、バットで威嚇するも虐待されてしまう男とある一組の男女の恋愛を追った『バット男』、恋人を殺された女性が独自に犯人探しをする『ピコーン』。これだけ簡潔に書くと「面白いの、それ?」と言われそうだが、読むとその良さがわかってもらえると筆者は思っている。文庫になって買いやすくなったことだし、いかがだろうか?

 

講談社文庫

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.071(2006年04月03日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール本店 古矢

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