シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『食がわかれば世界経済がわかる』榊原英資

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2006年4月17日

『食がわかれば世界経済がわかる』榊原英資

photo-2「ミスター円」の新作。大仰なタイトルであるが、内容は易しく書かれた食の文化史である。孔子の時代に遡る中国の外食文化や、大航海時代に人々を突き動かしたスパイスの話など、目からウロコの薀蓄が満載。そして現代に翻り、フランスが外交に料理を持ち出す理由や日本食ブームの背景などが語られる。狂牛病の問題も食文化の面から説明できるという。

世界の国々には二つの潮流があると著者は指摘している。食を資源ととらえるアメリカやイギリスのような国と、食を文化ととらえる中国・フランス・日本などの国。ファストフードに代表されるアメリカ食文化の貧困さを読むにつれ、後者の国に生まれた幸せを感じずにいられない。世界に誇る豊かな食文化を持った日本。我々はもっとその食文化に関心をもっていきたいものである。育児や学校教育の現場でも、食文化の大切さは強調されるべきだろうと思う。シンガポールの人々も明らかに食を文化と捉えている。そんな国に住むことができた幸せに感謝し、おいしい料理を味わい尽したいものだ。

 

文藝春秋

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.072(2006年04月17日発行)」に掲載されたものです。
文=親松

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