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2006年11月20日

『ワイルド・ソウル』上・下巻 垣根涼介

photo-20「カリブの楽園ドミニカの肥沃で広大な農地の無料譲渡」を募集要項に謳い、1950年代にドミニカへの移住を推進した日本。謳い文句とは全く異なる現実、そして移民政策の失敗、これが2000年の裁判に繋がっていく。提訴から6年を経た今年6月に原告側敗訴となったのは記憶に新しい。

但し、東京地裁は「外務省と当時の農林省は移住に際して、調査や説明を尽くす義務に違反した」と国の責任を認め、政府は移民に対して最高200万円の「見舞金」支払を示した。これを受けて、移住者たちは、棄民ではなく移民として、サントドミンゴで開催された移住50周年記念式典に参加することができたのだろうか。

1950年代、日本政府はドミニカだけではなく中南米への移住を推進した。本書の最初の舞台となるのはブラジル、アマゾンの奥地。政府の甘言に躍らされ、胸一杯の希望を持った日本人家族たちがそこに送り込まれた。そこでも、多くの者が倒れ離農していった。残された者は自分たちを棄てた日本への復讐を計画する。

かつての浅薄な移民政策を基にした、予想以上に良質なエンターテイメント。週末、眠る時間を惜しんで一気に読み終えてしまった。

 

幻冬舎文庫

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.086(2006年11月20日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見

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