2007年9月17日
『サイゴンのいちばん長い日』近藤紘一
ベトナム戦争の時代を生きていた訳ではないが、数多くの映画や本でベトナム戦争に関して耳にしてきた。ベトナム戦争を描いた数多くの素晴らしい映画や本があるが、その中から一冊。私の好きな本の一つでもある『サイゴンのいちばん長い日』を紹介します。
本書はサイゴン特派員としてベトナムに赴任していた著者近藤紘一が、1975年4月30日、南ベトナムの首都サイゴン陥落を描いた作品です。その陥落前夜の出来事は近藤紘一という一個人の経験でありながら、非常に普遍的な広がりを持って描かれています。また、ベトナムの人を奥さんに貰い、ベトナムを本当に愛した近藤紘一の視点は、本当に優しくて、外国人としてだけでなく、同時にベトナム人の視点からも描いたサイゴン陥落へ向かう日々は生々しいリアリティーを持って伝わって来ます。
実は数年前、手に本書を握り締めながら、私は現在のホーチミンシティー(旧サイゴン)へ向かいました。少しセンチ?な気持ちになっていたのかもしれませんが、文中で出てくる建物や通りの前に立ち止まってはサイゴン陥落へ向かう当時の光景が甦ってきたのでありました。
文藝春秋
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.106(2007年09月17日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見