2007年12月17日
『国のない男』カート・ヴォネガット
2007年の4月11日、カート・ヴォネガットが亡くなった。『プレイヤー・ピアノ』や『猫のゆりかご』等、アメリカ文学を代表する著者である。私自身、それ程熱心な読み手ではなかったけれど、亡くなったと聞いた時は少なからずショックを受けた。独特な世界観の中で紡ぎ出される言葉の一つ一つが、心に突き刺さって来る、そんな作家であったと思う。
その著者最後の著作が本書、『国のない男』である。一文、一文読み進める度に、ちょっとひねくれた笑いが出たり、何だろう…と考え込んでみたりするのだが、最後の著作だと思うと、意味が分からなくても、面白くもないアメリカンジョーク?
「あぁ、カート・ヴォネガットだなぁ」と何だか妙に優しい気持ちになってしまう。
最後に本書の中にあった言葉を書きたいと思う。
「変わった旅の提案――神のところに、踊りのレッスンを受けに行ってはどうだろう。」
今頃、ヴォネガットは神のところに踊りのレッスンを受けに行っているかもしれない…。
NHK出版
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.112(2007年12月17日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見