2008年1月1日
『物語 タイの歴史』柿崎一郎
日本にいたときよりも、タイを身近に感じる。ゴールデン・マイルに行けば嫌というほどタイを味わえるし、仕事でタイに行くこともあるからだと思う。
タイに関して一つだけ疑問に思っていたことがある。世界中どこでもその文化を維持し、チャイナタウンを築く華僑が、タイでは同化してしまっている点がそれ。本書を買ったのも、立ち読みしていてそれに関する記述があったからだ。
本書は、タイ人の起源から始まり、アユタヤ朝を経てタクシン政権までの歴史を一般向けに簡単に説明している。特に近代史の部分が面白かった。常にタイでは王権が絶大だと勘違いしていたが、立憲君主制に移行する際に革命まであったと初めて知った。
アジアで欧米諸国の植民地化が進む中でタイが上手く立ち回って独立を維持した点や、日本が勢力を伸ばす中で抜け目なく領土拡張を図っていた点も興味深い。
タイに長く住んでいると経験する3つのKがあると、昔、バンコクにいた人に聞いたことがある。「洪水」と「クーデター」がその二つだったが、もう一つがどうしても思い出せない。通貨危機を経験した人だったので、「危機」だったかもしれない。
中央公論新社
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.113(2008年01月01日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見