2008年11月3日
『深海のイール(上・中・下)』フランク・シェッツィング
我々は地球上にはじめて生命が生まれたのは海だったと知っている。地球の表面積の7割を占め、多くの生物が住んでいるのも知っている。それでも、宇宙ほど探索されておらず、意外にも知られていないことの方が多い。特に闇に包まれた深海は。
ノルウェー沖で無数の生き物が発見された。新種のゴカイだったが、海洋生物学者が首を傾げるほど不必要に強大な顎を持っていた。カナダ西岸ではホエールウォッチングを主催する会社が経営の危機を感じていた。鯨が現れなくなってしまったのだ。漸く現れたと安堵するのも束の間、今度は鯨がタグボートやホエールウォッチングに出た船を襲い始めた。また、ゼブラ貝に似た不気味な貝が航行中の船に襲いかかって航海不能にし、猛毒を持つクラゲが世界各地に出現し多くの人間の命を奪い、さらにフランスではロブスターに潜んでいた病原体が猛威を振るう。まるで母なる海が人間に罰を与え始めたように。
ドイツでエコ・サスペンスとして話題になり、国内だけで200万人以上が熱狂したベストセラー。
早川書房
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.133(2008年11月03日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見