シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『トコトワ』山内麻美・文/笠井きみよ・絵

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2008年12月1日

『トコトワ』山内麻美・文/笠井きみよ・絵

photo大人も楽しめる児童文学。主人公である9歳の「僕」の視点で物語が進んでいく。著者はシンガポール在住の作家。海の場面が多く描写されていて、なるほどと思う。挿絵の版画もとても趣があり、すんなりと一気読みが出来た。

読者それぞれに感じるテーマは異なると思うが、私は「親子の絆」を見ることができた。母親との会話や思春期ならではの戸惑い、父親の思い出の回想など、愛情に溢れていた。母親には夢があったのだが、それについて意見を言う描写が後半部分にあり、主人公である「僕」の成長がさり気なく見て取れた。海、とりわけ釣りや潮干狩りの描写も強く印象に残った。釣り人との会話や、初めて目の当たりにする烏賊釣りの様子。自分たちで捕った貝を使って作るボンゴレビアンコ。そして、そのレシピを教わる場面など、とても楽しそうで美味しそうに感じた。

「そう言えば、私の両親は元気だろうか」と、久しぶりに思い出させるような、そんな本です。

 

未知谷

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.135(2008年12月01日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 氏家

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