2009年5月18日
『世界見世物づくし』金子光晴
「シンガポールで生まれてはじめて猛烈なスコールに出あった。滝にとじこめられた花虻のように狼狽してカキ・ルマにおどり込んだ。眼前の街は消えうせて、ただ濛々たる水煙りのみ。一九二〇年第一回ヨーロッパ旅行の途次である…」
漂泊の詩人といわれ、長崎・上海・ジャワ・巴里へと旅をした金子光晴。彼が生まれてはじめてスコールに出会ったのがシンガポールであったという。それは今のシンガポールのどの辺りだったのだろうか……。そんな事を考えながら読むだけで楽しくなる。
金子光晴が行く先々で、見たこと、感じたこと、考えたことがすっと心に入ってくるエッセイ集。本書を片手にこの夏は旅に出ては如何でしょうか。
中央公論新社
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.145(2009年05月18日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見