シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2010年8月2日

『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎

photo-1太宰治の未完の小説「グッド・バイ」。この続きを書いてみないかという依頼を受けて、伊坂幸太郎が書き上げた短編小説。と言っても、もちろん続きではなく「グッド・バイ」にインスパイされて書き上げられた別の作品となっている。

本作品が誕生した経緯も面白い。抽選で50名に一話を郵送するという企画から生まれた。ある日郵便受けを見ると伊坂の短編が届いている、なんと羨ましいことだろうか。

最近の伊坂幸太郎の作品は読み進めるのがつらかったが、「バイバイ、ブラックバード」では久しぶりに軽妙洒脱な会話を楽しむことができた。

「グッド・バイ」と同じように複数の女性と付き合っている男性が主人公。その主人公が現在付き合っている女性に会い、別離を告げていく物語。太宰の作品と同じように、彼の傍らにいる女性が「こんな奴いない!」とつい声に出してしまうほど、なんとも珍妙。

それにしても「あのバス」は何処から来て、何処に行くのだろうか。安直な想像は最後で否定された。

 

双葉社/ISBN:9784575236958

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.172(2010年08月02日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見

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