2011年9月5日
『本に読まれて』須賀敦子
本を読む、ということが、いかに個人的な作業であるかというのを感じさせられる一冊である。
今回ご紹介する本書は須賀敦子が読んだ本……いや、タイトルからすれば本に読まれた須賀敦子のそれぞれの作品の書評である。ただ、単に書評と呼ぶのは惜しく、むしろ須賀敦子の想いが詰まった詩のような、作品になっている。
本書の中に『パウル・ツェラン全詩集』についての書評があるが、その中で、「詩-それはひとつの息の転換点なのかもしれません」という一節があるが、まさに須賀敦子が書いた本書も書評という域を超え、読んでいるとふっと呼吸のリズムを変えられ、少し楽な気持ちになれる。
まだ、読んだことのない方にはぜひ手に取ってみていただきたい本。
中央公論新社/ISBN:9784122039261
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.196(2011年09月05日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見