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紀伊国屋「おすすめの1冊」

2012年3月5日

『傍聞き』長岡弘樹

photo-8本書は表題作を含む4編の短編で構成されており、表題作『傍聞き(かたえぎき)』で日本推理作家協会賞短編部門を受賞している。その他3編も秀逸揃い。

その表題作は女性刑事が捜査に時間を取られる中、娘の不可解な行動に悩まされる。母として、刑事として、人として、短い中に人間ドラマがあり、著者の仕掛けに心揺さぶられることだろう。

どの短編も深い趣向が凝らされ、読む人を満足させる力がある。一見地味な作品で派手さはないが、長編とは異なる短編ならではの深み、無駄のない物語の疾走感、読後の気持ち良い爽快感を味わえる。本当に贅沢な短編集であり、短編小説の素晴らしさを感じることができる1冊だ。

 

双葉社/ISBN:9784575514537

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.207(2012年03月05日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 村山

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