2012年3月19日
『贖罪』湊かなえ
ポッドキャストで小島慶子の番組を聴くことがある。その番組の中で、数ヶ月前にRHYMESTERの宇多丸が紹介していたドラマがあり、その原作が湊かなえの『贖罪』。
『告白』で有名な作家だが、これまで縁なく、1冊も作品を読んだことがなかったこともあり本書を買ってみた。
とある町での物語。1人の少女が殺害され、4人の同級生の少女たちが容疑者の男を見ていた。ところが、誰1人として彼の顔を思い出せないと言う。少女の母親は、「あんたたちは人殺しよ! わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい」と、激情の言葉を投げつけて町から去っていく。少女たちはその言葉の影響を受けて成長し、それぞれの道を歩んでいく・・・・・・。
ハッピーエンドで終わるわけでもなく、陰湿で救いがないが、かなり楽しめた。最も記憶に残ったのは、成長して小学校の先生になった少女の物語。出る杭は打たれるのが日本社会か、と考えさせられた。
東京創元社/ISBN:9784488017569
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.208(2012年03月19日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見