2013年2月4日
『吉祥寺の朝日奈くん』中田永一
週末に読む本がないと、時々同僚にお勧めを聞いてみる。自分の好みから離れた本を読むのは、思いもよらない発見があって楽しい。そして、この作品は週末どころか、読み始めたら止まらずに、金曜日に終えてしまったもの。
本書は5つの短編からなる恋愛小説集で、表題作の「吉祥寺の朝日奈くん」は映画にもなっていて、評判も良かったようだ。
ちょっとしたミステリ仕立てで、友情や、恋の始まり、愛について描かれている。おすすめは「三角形はこわさないでおく」。高校生の男女3人の話なのだが、ゆっくりと互いをせかすことなく、惹かれあっていく3人の関係は、せつなく美しい。
道具立てや設定は少し現実離れしているように感じるところがあるが、話が面白くて、そこにある感情がしっかりと描かれているので、共感できた。甘い雰囲気があまりないので、恋愛小説が苦手な人にもお勧め。
祥伝社/ISBN:9784396338022
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.228(2013年02月04日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 河合