シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP米中貿易戦争で五里霧中の当地不動産市況(2)

シンガポール不動産「耳寄り情報」

2019年7月25日

米中貿易戦争で五里霧中の当地不動産市況(2)

● チャイナ・ファクター
 今年2月の旧正月直前に、親しい不動産エージェントから「セントレジスレジデンスの4,000平方フィート超の超高級物件に買い手が付いた」と喜びの電話をもらいました。旧正月を前に縁起の良い話で、手付金(通常1%)の支払いを待っているとのことでした。その後、たまたまこの顛末を聞く機会があったのですが、この”大陸中国”のバイヤーは、手付金は支払ったものの、本契約には至らず、手付流しに終わったようです。1,000万Sドル(約8億円)を上回る購入資金の手配ができなかったのではないか?というのが、筆者の推測ですが、これがまさにチャイナ・ファクターで、今年の不動産市況を象徴しています。

 

● 住宅取り壊し・再開発フィーバー

 当地では、2017年からEn Bloc Sales(一括売却)フィーバーが続いてきました。現在は、経済の先行き不透明感や政府の規制などもあり、買い手であるデベロッパーが尻込みしつつありますが、2017年、2018年通年でそれぞれ、2,767戸、3,185戸、総計5,952戸の既存物件が再開発のため、売約されています。これらの大半が、2018年半ばから2020年半ばには取り壊されるものとみられ、民間住宅の空室率を年0.7%程度ずつ引き下げるインパクトがあります。一時的にではあれ、住宅の空室不足が非常に懸念されています。

 

● 労働ビザ発給審査厳格化も影響

 在シンガポール邦人総数は、2017年10月1日現在3万6,423人(外務省統計)ですが、2018年4月末、2019年4月末には、それぞれ5~10%程度減少し、現在3万人をいささか上回る程度ではないかともいわれています。賃貸住宅やオフィスの需要家である駐在員総数の減少も、底打ち・反騰しつつあった住宅ならびにオフィス賃貸相場に冷や水を浴びせる結果となりました。さもなくば、リーマンショック前のピーク時にほぼ肩を並べた再開発のための既存物件取り壊しによる供給逼迫が、特に住宅賃貸料の暴騰を招いていた可能性が高いでしょう。

 

● 今後の民間住宅バランス


 

 上の図「今後の民間住宅供給見通し」をご参照ください。年間平均1万4,700戸(過去5年間の実績値から算出)の民間住宅入居需要増に対し、2018年、2019年、2020年と、3年連続で新規竣工数の年1万戸割れが続いています。さらに、この「今後の民間住宅供給見通し」には、再開発のための取り壊しによる戸数減は加味されていないため、それも考慮すれば需給のタイト感が強まる可能性が高いでしょう。しかしながら、入居需要増も、2018年以降労働ビザ発給制限や世界経済不透明感の高まりからスローダウンしつつあり、今後の住宅賃貸市況は五里霧中の状況に突入しつつあるように見えます。(次号に続く)

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.348(2019年8月1日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP米中貿易戦争で五里霧中の当地不動産市況(2)