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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2019年3月8日

懸念される深刻な賃貸住宅不足

グラフ「En Bloc Sale(一括売却)年間総額」をご参照ください。政府の規制強化でいささかスローダウンは見られるものの、取り壊し・再開発を目的とした既存集合住宅(コンドミニアム、アパート)の2018年売却実績は、リーマン・ショック前年の2007年のピークに迫る39案件・約108億Sドルに達しました。

 

●賃貸住宅不足のインパクト
1. 新築不動産価格上昇で一層狭く、小さく高値で仕入れた既存の建築物を取り壊して、新たに建設するということは、新物件の売り出し価格が高くなければ採算が取れません。必然的に価格は上昇することに。ユニットごとの売価を抑えるために、アパートのサイズはますます狭く・小さくなる傾向にあります。また、販売しやすいように1~2ベッドルームタイプやスタジオタイプ(いわゆるワンルームマンション)が急増。日本のバブル末期に、どこか似ていませんか?

 

2. 深刻な賃貸住宅不足発生で家賃急騰も一括売却されたコンドミニアムやアパートの住人(自己居住のオーナーならびにテナント)は、明け渡し期限までに全員退去を迫られますが、その期限が2019年以降、津波のごとく到来します。既に6%台にまで低下している民間住宅の空室率が一段と低下すれば、賃貸料の急騰がより現実的なものに。ちなみに、この空室率が6%を割り込む水準にまで下がった2006年半ばから2008年半ばには、賃貸相場は60%暴騰しました。

 

3. 再開発物件竣工後は売価・賃貸料の急落も取り壊しから約2年~3年後の竣工を待たずとも、先行きの過剰感が高まってくると、今度は下げ圧力が高まります。家賃急騰の反動で、ジェットコースター相場(ハイ・ボラティリティー)になることも懸念されます。

 

●始まった取り壊し工事

旧 ノー マ ントン・パ ー ク(Normanton Park)。サイエンス・パークの一角にそびえたつ集合住宅。488世帯すべて退去し、取り壊し工事が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧クリスタル・タワー(CrystalTower)。MRTスティーブンス駅 徒 歩 圏 の 高 級 住 宅 。約
3,000sqftの床面積を持つ28戸からなっていたが、建替え後は約130戸になるとみられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧ロイヤルビル(Royalville)。MRTシックス・アベニュー駅に近い閑静な集合住宅+店舗。93世
帯すべて退去し、取り壊し工事が始まった。

 

 

 

 

 

●中心地区だけでも、これから続々と

一括売却による再開発が決まっている物件は、ダニアン・ガーデン(Dunearn Gardens)、チャンセリー・コート(Chancery Court)、バルモラル・ガーデン(Balmoral Gardens)など中心地区だけでもかなりの数に上ります。

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.343(2019年3月1日発行)」に掲載されたものです。

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