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2018年12月28日

新年に読みたい1冊

新しい年を迎えてちょっと身が引き締まる今こそ、読書はいかがですか? シンガポールで活躍している12名の方々に、おすすめの本を聞きました。新しい刺激やアイディアを与えてくれる1冊がきっと見つかりますよ。

 


 

JETROシンガポール事務所
所長
石井 淳子さんのおすすめ
『プラナカン
東南アジアを動かす謎の民』

太田 康彦(著)
日本経済新聞出版社舎

シンガポールにも、特定の歴史背景から花開いた独特な文化があることは、友人が「実は」自分はプラナカンだと告白するまで全く知らなかった。マレー半島を往来した中国商人と地元の女性が家庭を築き、創り上げた色豊かでハイブリッドな世界は現代シンガポール人が信仰するイノベーションにも通じる。知るほどに興味が尽きない過去の繁栄と、今その存在を表に出そうとしない謎の民に何があったのか。そこに大きな影響を及ぼした日本は。日本人にも人気が高いプラナカン料理、家屋や家具、陶器や小物、衣装にも触れ、著者が出会うプラナカンとのやり取りに引き込まれ一気に読み進むと、これまでとは違う奥深いシンガポールが見えてくる。

 


 

Advanced Inner Care Solutions Pte. Ltd. 代表取締役社長
黒田 望美さんのおすすめ
『 その「決断」が
すべてを解決する』

マーク・マンソン(著)
HarperCollins Publishers Inc

とてもインパクトのあるタイトルですが(笑)、“I don’t give a fuck”とは「そんなこと気にしない」といった意味のスラングです。私自身にも言えることですが、やりたいことがあるにも関わらず、ささいなことに囚われて大きく時間を浪費してしまっているという人は意外と多いのではないでしょうか。すべての人は生きる時間に限りがあり、死は必ず訪れるものだということを前提に、何を気にして何を気にしないのか決断する(優先順位をつける)ことの大切さを学べる一冊です。あなたにとって何が大切かを考えるきっかけになるのでは。限られた時間の中で最大のパフォーマンスを求められるビジネスシーンにも応用可。アメリカでは200万部超の大ベストセラーになっています。

 


 

RGF Talent Solutions Singapore Pte Ltd
Director, Japan Desk
野﨑 裕司さんのおすすめ
『ラグビー元日本代表ヘッドコーチとゴールドマン・サックス社長が教える
勝つための準備』

エディー・ジョーンズ、持田 昌典(著)
講談社

これは2018年1月に最初読んだ本で、物事が上手く行っている時にこそ読み返したくなる一冊です。2015年ラグビーワールドカップで日本代表を“世紀の大金星”に導いたエディー・ジョーンズと、ゴールドマン・サックス日本法人社長、持田昌典。共にラガーマンであり、世界を舞台にチームを率いるリーダーである二人が、世界で勝ち続ける為の心の持ち方と準備の仕方を説いています。スポーツやビジネスに関わる方はもちろん、教育に関わる方にも大変参考になる本かと思います。
「テクニックとスキルは、何が違うか?」
気になった方は、是非読んでみてください。

 


 

Toyota Tsusho Asia Pacific Pte. Ltd.
General Manager, Legal Department, Regional Business Unit 弁護士(日本及びNY州)
切貫 総子さんのおすすめ
『陰謀の日本中世史』
呉座勇一(著)
角川新書
歴史上の陰謀を面白おかしく描く本、ではありません。歴史学者が中世日本史の大小さまざまな陰謀論を分析して真面目に反証をあげて論破していく本です。筆者によると、陰謀論とは「特定人・組織が予め仕組んだ筋書きどおりに歴史が進行したという考え方」で、学界では低級(!)とされるため通常は歴史学者の研究の対象にされることはないとのこと。個人的には、本能寺の変に関し、「明智光秀単独犯行説」(動機については、怨恨、野望、勤皇等)と、「明智光秀共犯説」(主犯については、朝廷、イエズス会、将軍足利義昭、豊臣秀吉、徳川家康等)との諸説が入り乱れていることに驚きました。また、全体を通して、資料をベースにあたかも裁判官のような事実認定を行う筆者の姿勢は興味深いものがありました。本書は、歴史が好きな方に対しては言うまでもありませんが、そうでない方に対しても最終章において人はなぜ根拠の薄いいい加減な説を受け入れてしまうのかという疑問に対する1つの解が示されているように思いますので、お勧めさせていただきます。

 


 

ジー・エム・ティー
代表取締役
横瀬 秀明さんのおすすめ
『SHOE DOG
靴にすべてを』

フィル・ナイト(著)
東洋経済新報社

靴を売る仕事をしている私には、バイブル的な1冊。どのように「NIKE」という世界最強のシューズブランドをつくってきたのか。創業者フィル・ナイトの生きざまと「ブランド」の成長をこの1冊で知ることができました。
「NIKE」の誕生には日本人のいろいろな関わりや、歴史があること。アメリカと日本のビジネスマインドの違いは大きくブランドビジネスの手法を変えたこと。今だから話せるフィル・ナイトの物語はファッションや靴の仕事をしている人以外の誰もが感動します。

 


 

Mitsubishi Chemical Asia Pacific Pte. Ltd. General Manager,
Administration & HR Department
萬 卓也さんのおすすめ
『阪急電車』
有川 浩(著)
幻冬舎文庫

複数収録されている短編において、ある短編で主人公である人物が別の短編では脇役で登場、すべて関連しており全体として一つの物語が形成されているかのようになっているところがとてもおもしろい。「たまたま乗り合わせただけ」、その偶然が奇跡を起こす、現実にも起こりえそうなハートフルな内容で、読んだ後心温まる気持ちになれます。個人的には、この物語で描かれている舞台の路線を使っていたこともあり、特に同じ経験をお持ちの方には、懐かしく感じられるのもオススメする理由の一つです。既に映画化されてもいますので、この本を読んだ後、映画を見てみたら、また違った形で楽しめるのではないかと思います。

 


 

Kawatec Pte Ltd
代表取締役)
川辺 高峰さんのおすすめ
『生き方―
人間として一番大切なこと』

稲盛 和夫(著)
サンマーク出版

これは12年前の2007年にシンガポールで起業をする時の「原点」ともなった本です。昨年の反省と新しい年をスタートさせる新年にこの本を読むことによって再度起業した当時のように初心に帰り、フレッシュな気持ちにさせてくれます。新年に今一度乱れた気持ちを引き締め、この本を読み忘れかけていた重要なことを再び思い出します。経営の神様の稲盛さんが半生を通して貫いてきた大切な普遍の法則が書かれており、人間として何が正しいのか、普遍的な「原理原則」を知ることの重要性が書いてあり常に心を磨くことこそが人生の目的と伝えています。正しい生き方、働き方について自分の中に確固たる「哲学」をもてるように、ぜひ本書を読み新年に参考にして頂ければと思います。

 


 

ターゲットメディアソリューション 代表取締役
マンガデザイナーズラボ マンガデザイン® 総合プロデューサー
吉良 俊彦さんのおすすめ
『塑する思考』
佐藤 卓(著)
新潮社

「発想とは、『ある目的のために今まで繋がっていなかった事象同士を繋げる試み』であって自分が『無』から純粋に生み出すものでは決してありません。すでにあるのに気づかずにいた関係を発見して繋ぐ営み、と言ってもいいでしょう…」と本書の中で佐藤卓氏は語っています。発想を仕事の核とする私にとって『無』からの創造に替わるこの思考は自分にとって新たな創造性を生み出してくれました。また、『弾性的』に替わる『塑性的』な『やわらかさ』に対する思考により、私に『時代に適したメディアに対応してゆく』という塑性的思考を与えてくれた貴重な一冊です。(著者・佐藤卓氏は電通時代の同期です)。

 


 

JAC Recruitment Pte. Ltd.
Managing Director / Singapore , Operations Director / Indonesia
早瀬 恭さんのおすすめ
『戦略の地政学
ランドパワーVSシーパワー』

秋元 千明 (著)
ウェッジ

「世界地図を上下逆さまに見るだけで、全く違った世界が見えてくる」。こういったプロローグから始まる同著は、近代史や世界で起こっている国際情勢、紛争問題、そして経済活動などを、世界地図をなぞるように優しく説明してくれます。中国など拡張主義的な動きを続ける国々がある一方で、戦略的に経済連携協定を強める国などを、地政学上の言葉で「ランドパワー」と「シーパワー」の2つに分類して解説をしてくれる読みやすくも刺激的な本です。一帯一路、英国のEU脱退、尖閣諸島問題などなど昨今慌ただしい時代に少しだけ世界への知見を深める事ができ、読み終えた後に地球儀が欲しくなる、そんな一冊です。

 


 

Cornes Singapore Pte Ltd.
Director
米山 智紘さんのおすすめ
『なぜ?シンガポールは
成功し続けることができるのか』

峯山 政宏(著)
彩図社

みなさん何かしらの理由があって今シンガポールという地にいらしているかと思います。私自身も会社から駐在の話があり2015年から赴任することとなりましたが、この本を読むまでシンガポールという国の本質を知ることはありませんでした。約50年前にシンガポールという何も資源のない未熟な小さな国が独立し、現在にはアジアを代表する先進国にまで成長することとなりました。その背景に何があったのか、その秘密とカラクリ(戦略)は単に国の政策としてだけではなく、企業や個人の生き方にとっても大変教訓になる内容が含まれています。単なる歴史書・ビジネス書ではなくシンガポールのうんちくも学べる非常に読みやすい本になっています。

 


 

PHOENIX ACCOUNTING
SINGAPORE PTE. LTD. Director 日本公認会計士
日浦 康介さんのおすすめ
『「学力」の経済学』
中室 牧子(著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン

あくまで、経済学者として教育を一つの投資と考えたときにどうなるか?ということをテーマに書かれた本です。見出しを見てみると、子どもをご褒美で釣ってはいけないのか?ほめ育てはしたほうがよい?ゲームをすると暴力的になる?といったことに対して経済学者はご褒美で釣ってもよいし、ほめ育てはしてはいけないし、ゲームをしても暴力的にはならないといっています。教育の投資をいつするべきかなど専門的な話もあるのですが、全てにデータを引用してあり、教育を一歩も二歩も引いた目で見ているところが面白いです。著者は自身に子どもはいないし、特に教育哲学もないそうです。シンガポールや隣のマレーシアは本当に色々な学校があるので、子どもの学校選びに迷った時に参考にしたい一冊です。

 


 

OMNIBUS PARTNERS PTE LTD
Director
青木 里沙さんのおすすめ
『現代アートとは何か』
小崎哲哉(著)
河出書房新社

2018年はアートに触れる機会の多い年だった。アートは比較的好きな方だと思っていたけれども、特に体系だった知識を学んだわけではなく、ただ漠然と好きなものを好きなように鑑賞するのが常だった。そんな中、理解ができないと感じることが多かった現代アートについて、ヒントを得たくて手に取った一冊。本書の前半は現代アートをめぐる世界の主要な登場人物と彼らの動きについて、後半は現代アートとは何かについての議論になっている。予想以上に魑魅魍魎としたアート界の話はさておき(かなり面白かったが)、一鑑賞者として心構えのガイドを手にした気がする。今後は新たな視点を持って現代アートと対峙することができそうで楽しみである。

協力=シンガポール紀伊國屋書店

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「新年に読みたい1冊」で紹介されている本が、紀伊國屋書店に勢ぞろい!

読書好きな方はもちろん、しばらく新しい本を手に取っていないという方も、是非、足を運んでみて下さい。

● シンガポール本店:

391 Orchard Rd., #04-20/20B/20C, Ngee Ann City Takashimaya Shopping Centre, (S) 238872
● リャンコート店:

177 River Valley Road, #03-50 Linang Court, (S) 179036

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.341(2019年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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