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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年11月30日

急騰懸念される住宅賃貸市況

●住宅賃貸相場も反転上昇
長らくジリ下げを続けてきたシンガポールの住宅賃貸市況も、底這いから反転に転じています。都市再開発庁(URA)の民間住宅賃貸料指標(2009年第1四半期=100)によると、2013年第2四半期をピーク(指数:118.2)として緩やかに下げ続けてきた民間住宅賃貸料も、2017年第4四半期(指数:102.5)には底を打ち、緩やかな反転上昇に転じています。2018年第3四半期の指数は、104.1となりました。

 

●売買相場と賃貸相場の根本的違い
賃貸相場は実需給で決まるのに対して、売買相場には仮儒(投資・投機需要)が強く影響します。政府は、徹底的な価格抑制策で、特に投資・投機需要の抑制を図っていますが、1年前(指数:138.7)対比で2018年第3四半期の指数は149.7となっており、この1年でかなり上昇しています。

 

●住宅空室不足の悪夢再び?
右図「民間住宅(含む土地付住宅)需給バランス」をご参照ください。青い棒グラフは四半期ごとの需要増を示し、赤い棒グラフは四半期ごとの供給増を示します。紺色の折れ線グラフは、空室率を示します。2016年第2四半期の8.9%をピークに、空室率は急速に低下し、2018年第3四半期には何と6.8%と、驚くべき低水準となっています。
この空室率が6%を割り込む水準にまで下がると、住宅賃貸市場の逼迫感が劇的に高まり、家賃相場が急騰することは、2006年半ばから2008年半ばに賃貸相場が60%暴騰した事実が如実に示しています。

 

 

●取り壊しラッシュが賃料高騰の引金になる
過去5年間の民間住宅需要増は、年平均約1万4,000戸であったのに対し、2018年、2019年、2020年の供給増は、政府認可値ベースで、それぞれ約6,000戸、9,000戸、3,000戸と低水準にとどまります。その結果、空室率は確実に低下を続けるでしょう。
加えて、上記に加味されていない再開発による既存集合住宅の取り壊しが、供給不足に更に追い討ちをかけます。再開発に伴う取り壊しは、2019年、2020年それぞれ年2,000戸を上回ると推計されており、特に2019年は2,500戸を超える可能性も高いでしょう。これは空室率を更に0.7%押し下げる効果があり、2019年~2020年にかけての賃貸料急騰は、ほぼ不可避とみられます。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.340(2018年12月1日発行)」に掲載されたものです。

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