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ドクター・グリーンのワンポイント医療情報

2018年10月31日

災害と破傷風

日本では地震などの自然災害が頻繁に起こり、シンガポールに住んでいても母国の様子に胸を痛めている方も少なくないでしょう。皆様の中にはご自宅が被災され、手伝いに帰国された方もいるかもしれません。

 

災害時は災害そのものによる被害も甚大ですが、救助や片付けなどで被災地に入った救助者の怪我や病気も大変大きな問題です。倒壊した建物の片付けなどのために被災地に出向き、その時に釘を踏み抜いたり瓦礫で怪我をする事もあります。泥が付着したもので傷を負うと傷が化膿して治りにくいだけでなく、破傷風という致死的な病気にかかることもあります。東日本大震災でも、地震・津波による被災時に受傷した傷から破傷風菌に感染して発症した例が何例も報告されています。

 

破傷風は破傷風菌が傷口から感染し、その毒素によって痙攣を引き起こす感染症です。土壌内に生息し、軽微な傷からも感染します。潜伏期間は3~21日で、全身の痙攣や麻痺によって30%が死に至ると言われています。傷口をよく洗浄することで、感染はある程度防げますが、災害時は洗浄用のきれいな水の確保が難しいことがあります。予防接種で予防することができ、幼少期の定期予防接種にも組み込まれていますが、大人になって十分な抗体価を維持するには10年に1度の追加接種が必要です。

 

被災地へ支援に赴くときには破傷風の予防接種を済ませているか再度ご確認ください。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.339(2018年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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