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2018年6月26日

ポトン・パシール

 特別な用事がなければきっと訪れることがない駅、ポトン・パシール。HDBが立ち並び、エキスパートが少ない地域は素朴でどこか温かい。実際に住んだ事があるが、カランリバー沿いの遊歩道で自然に触れる生活ができる上に、物価が安く駅周辺にアメニティが集中して便利な、住むのにも穴場なスポット。ローカルの人々と気軽に知り合いになれて、時間がゆったりと流れるポトン・パシールを、探索してみよう。

 

 MRTパープルラインに乗っていると、ちょっとした楽しい瞬間が、朝夕の通勤を快適にしてくれることがある。停車駅のアナウンスで「ポトーン……パシ〜ル♫」と、それまでファーラーパッ!(Farrer Park) など字面よりシャープで強気に発音されてきた駅名と違って、急に気の抜けた響きに変わるためだ。そのギャップが大きく、ぷっと笑ってしまうのは、筆者だけだろうか。

 

歴史と現在

 ポトン・パシールは、駅周辺に新築のコンドミニアムがいくつか見られるものの、基本的にはローカルな地域。多数の高層HDBが立ち並び、ホーカーやマーケットでローカルの人々が昼夜問わずまったりと過ごしている。セントラルに位置しながらも、ちょっと時間が止まったような古き良き地域。のどかな語感ポトン・パシールの由来は、マレー語で“Cut Sand“だとか。1950年代に農業にとってかわるまでの1900年初めから半ばまで、当地は砕石所として栄えたためだ。

 

 ポトン・パシールは1984年の総選挙以来、もっとも長きにわたる単一選挙区(Single Member Constituency )として、またもっとも長く野党議員を務めた、ポトン・パシールの顔として親しまれるLow Thia Khiang氏が率いるシンガポール労働者党(Workers’ Party of Singapore)の選挙区としても有名だ。「私は勇気がある男ではない。でもシンガポールが大好きで、シンガポール人が大好きなんだ」という彼の言葉にあるように、古き良き“村的コミュニティ”をそこかしこに感じる、ポトン・パシール。

 

 最初の高層HDBがこの地に建設されたのは、1982年。大抵のHDB敷地内にはヘアサロン、ナーサリー、雑貨屋、子供のプレイグラウンド、バスケットコートなど、要は生活に必要なものがなんでもある。夕方になると、老人やHDBに住む子供が下の広場に集まってきて、プレイグラウンドを囲み世代を超えた団欒のひと時が見られて微笑ましい。

 

自然や人とのふれあいが楽しい

 Sri Siva Durga Templeの近くでは、ふわりと良い香りがするので香りの方に向かって歩いて行くと、せっせとヒンズーの花飾りを作る店の男性がいた。町中でインド系の人を良く見かけるので、インド人コミュニティの規模が大きいのかと感じた。

 

 

 ポトン・パシールで町歩きをすれば、必ず出会う笑顔の数々。ホーカーで働く女性たちと和んで話し、野菜マーケットでは安くて新鮮な野菜を物色し、店のおじさんとまた立ち止まって無駄話。つい、時の流れが止まってしまう。

 

 駅周辺にスーパー、銀行、コミュニティセンターなどアメニティが充実していて、かつドビーゴート駅から4つ目と中心地からのアクセスもいい。筆者も住んでいた時期があるが、大変生活しやすいだけでなく、カランリバーが近いため健康的なウォーター・フロント・ライフスタイルが送れる、住むのにもおすすめの地域。注目すべきは、2015年に700万シンガポールドルをかけたカランリバー沿いの再計画により、川沿いが美しく整備された展望デッキ、遊歩道など子供から老人が集う憩いの場となったこと。雨水が特別な植物や土壌を通ることで、きれいになって川に排出される『Active, Beautiful, Clean Waters Programme (ABC Water)』という仕組みにより、環境にやさしいコミュニティエリアと変化した。トンボが飛び草花が咲き乱れる美しい景観は、商業化されたリババレーからクラークキーエリアの川沿いの風景より、ずっと趣がある。

 

 

毎週日曜無料エクササイズ

 そのカランリバーの広場で、シンガポール政府Health Promotion Board主催で、プロのダンス講師などによるエクササイズが、なんと無料で受けられるプログラム『SUNDAYS@THE PARK』が毎週日曜日に開催され、地元の人に大人気となっている67。朝8時半から9時半まで、数回ごとに異なる講師がズンバやピロキシング(ピラティスとボクシングを組み合わせたエクササイズ)を教えてくれる。筆者も参加したことがあり、友人で講師のAnnie Lowのピロキシングを体験。このピロキシング、下半身はずっとステップを踏んだままで、上半身はボクシングの動きが入るなど、かなりハードなエクササイズなのに高齢の方から若年層、また性別も多様な地元の人々が参加していたことに大変驚いた。川を眺めながら早朝の風を受けつつ汗を流すエクササイズ体験は、心地よい。シンガポール人だけでなく、誰でも参加できるので、近くにお住まいの人はトライしてみては?

 

 

ポトン・パシールのおすすめスポット
豆乳デザート屋『N&B Snacks』

 

 おしゃれなカフェチェーンが全くない、ポトン・パシール。でも、この一見そっけない豆乳デザート屋には、ひっきりなしに馴染みのお客さんがやってくる。おすすめは、ピーナッツを砕いた餡が入った餅入りの温かいPenut dumplings in silken tofu and soya milk。もちもちの食感に温かい豆乳のやさしい味が、クセになる。甘すぎないので罪悪感もゼロ!冷蔵庫には冷たい豆乳が、砂糖の量別に並べられており、ダイエット中の人や健康志向の人におすすめのお店。
 

 

N&B Snacks
148 Potong Pasir Ave 1, Singapore 350148
TEL: 6284 6323

写真・取材:舞 スーリ

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