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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2017年12月27日

2018年のシンガポール不動産市況を占う

2018年のポイント
● 取壊し・再開発フィーバー
● キーワードは「MRT新線沿線」と「新駅徒歩圏」

《概観》
【住宅】2017年10月以降、集合住宅再開発のためのEn-Bloc Sale(一括売却)が急増。今後も同様の案件が多数控えている。2018年、住宅売買・賃貸相場共にジリ上げの見込み。

 

【店舗】賃貸不振で再開発が増えそう。小売業界での人手不足に加えて、オンラインショップ増加の影響も少なくない。

 

【オフィス】空室率が上昇している。オフィスビルは家主が大手資本のため、無理をして賃料を支えているが、限界あり。空室率が反転・減少するまでは、ジリ下げが続く。なお、小規模な業者も多いサービスオフィスは値崩れ状態。米国発のコワーキングスペース(起業家支援を念頭に会員制で共用机貸し)も乱立しつつあり、結果的にオフィス市況全体の足を引っ張るであろう。古いオフィスビルの再開発に拍車がかかりそう。また、再開発の際に、住宅や店舗に一部転用される複合開発も増加するとみられる。

 

《一括売却急増の影響》
1. 既存集合住宅の一括売却フィーバー
2017年10月~11月の2ヵ月間だけで下の表にある一括売却が成立している。2016年からの通算では計25コンドミニアム、総売却額は84億Sドルなので、ここにきて加速している。

 

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シックスアベニューとブキティマ・ロードの交差点近くのRoyalville(写真)は、1988年竣工の店舗と住宅計93戸からなる低層プロジェクトで、過去に何度となく一括売却が試みられたが、成立せず。今回、最低希望価格の3億6,800万Sドルを大きく上回る4億7,800万Sドルで売約された背景には、住宅市況の底打ち・反転のみならず、MRTダウンタウン線シックスアベニュー駅が2015年12月末にオープンし、利便性が大きく向上したことが挙げられる。

 

2. テナント追出しの増加
一括売却への動きが顕在化すると、売却前でも入居をためらうテナントが増える。また、退去した住民(テナントのみならず、自己居住者のオーナーも含め)が移転先を探すため、賃貸需給逼迫につながりうる。その後、再開発物件が竣工してくると、賃貸相場は再度軟化する。

 

3. 民泊解禁は困難?
短期貸しを解禁すると、コンドミニアムの賃貸需給がさらにタイトになる一方、ホテルの顧客を奪ってしまう。また、住環境悪化への住民批判もあり、当面解禁はない?

 

4. 外国人購入者への追加印紙税15%は恒久化?
シンガポール金融管理庁(MAS)のバブル懸念もあり、追加印紙税の緩和は遠のいた?

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.329(2018年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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