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熱帯綺羅

2019年4月25日

目指せ、医療大国

高水準の医療レベルを提供 医療ツーリズム増加で、さらなる外貨獲得を目指す

 健康診断、受けていますか?「シンガポールに来てからはなかなか、機会がなくて…」とか「やっぱり、日本のほうが優れているから次の一時帰国の時にやるつもり」という方、多いのでは。ご存知ですか?シンガポールは、世界でも有数の医療先進国です。シンガポールの医療制度は広範囲かつ効率的であることから、世界保健機関(WHO)による保健医療制度のパフォーマンスを評価したランキング調査(2000年)で世界6位(東京は同10位)と評価、また、ブルームバーグによる世界ヘルスケア指数のランキング(2016年)でも世界55ヵ国中、香港に次いで2位にランキングされています(東京は5位)。また、JCI 認証(※)を取得している病院数がアジア1位であることもあまり知られていません。


ヘルスシティ構想のノビーナ地区 様々な医療施設が林立
 

「自助努力」を啓蒙し、医療費の財政負担軽減

 シンガポールの社会福祉のスローガンは「自助努力」。政府は国民に医療費の積み立てを義務化し、その貯蓄額の範囲内で自分に合った医療サービスを選択するようにした結果、医療費による財政負担軽減に成功しました。医療機関においても公立・私立を問わず全ての医療機関を株式会社化、グループ間の競争意識を芽生えさせることに成功し、医療レベルを向上させています。また、シンガポール人医師不足問題を解消するために世界で活躍する外国人医師を積極的に受け入れ、医療水準は非常に高度なものとなりました。
 さらに、政府は2013年に2030年完成予定の「ヘルスシティ ・ノビーナ構想」を発表。国立タン ・ トクセン病院を中心に、コミュニティ病院や研究機関、医学校など総合的な医療施設や、介護関連施設が集約されたマスタープランに基づいて開発が進められています。一ヵ所に医療、看護関連施設を集中させ、患者のニーズに包括的な対応し、治療施設と研究、教育機関との連携も促進することも目指しています。この国の医療制度はより時代のニーズに即しており、発展の余地がありそうです。


ミーティングポイント 様々な病院がマップに表示されている

 

世界の富裕層を呼ぶ、高い医療レベル

 シンガポールは、質の高い医療サービスに加え、多民族国家ならではの言語、文化、慣習面での外国人への柔軟性が、富裕層の医療ニーズに適合している言われています。そこに目を付けた政府は、「医療は産業」という観点で、国外からの外来・入院患者を獲得するいわゆる「医療ツーリズム」を政策として掲げています。例えば、自国の医療技術のプレゼンスを高めるために生物医学の研究開発に総力を挙げていることから、マレーシアやインドネシアからシンガポールでしか受けることができない先進医療を求める多くの富裕層が治療目的でやってきます。私立病院患者のおよそ3割、公的医療機関はおよそ2割が外国人患者とも言われ、近年は中国及びアラブ諸国からの医療ツーリストも増加傾向にあります。民間医療機関はもちろん、公的医療機関も外国人患者を医療ツーリストとして受け入れており、産業振興に重要な役割を果たしているのです。シンガポールは人口規模が限られていることから、より多くの外貨を獲得するために、先進かつ質の高い医療技術を更に発展させ外国人患者の受け入れを可能にし、これにより得た利潤をもとに医師が専門分野の研究を行っていく。そして更なる医療技術の向上が図られるという好循環のもと、シンガポールの医療ツーリズム市場は振興が続いているのです。

ラッフルズ病院と専門医クリニックセンターが隣接
マウントエリザベス病院 東南アジア最大の私立病院。ロビーには花や調度品が置かれ、ホテルのような落ち着き

 

マウントエリザベス・ノビーナ病院 250以上の専門医クリニックが並ぶ

歴史のある産婦人科および小児科のための国内最大の専門病院、KK・ウィメンズ・アンド・チルドレンズ・ホスピタル(KKH)

「スピード」と「ホスピタリティ」が医療産業振興のカギ

 「今まで風邪をひいたこともなかったので、正直、健康康診断を甘く見ていた」と日系クリニックで行った、年に一度の健康診断で乳がんが発覚したA子さん。発見から2週間後には癌摘出手術が完了。迅速な専門医への引き継ぎ、手術日と病院のファシリティ使用の調整、放射線科と化学療法科のチームの連携が素晴らしかったと当時を振り返ります。先進的な癌細胞精密検査もすぐに実施され、その度、詳しい納得のいく説明があり、放射線治療も引き続き実施し、術後わずか2.5か月で元の生活に戻ったそうです。今では、「仕事も趣味のゴルフもできます。ヨガにも毎週通っている」と楽しそうに話してくれました。また、看護師の免許を持つ通訳の方にも常時付き添ってもらい、診療予約の調整など専門知識と経験を生かして誠実に対応してもらったとのこと。「言葉だけではなく、異国の地で、知識もなく十分な知り合いもいない孤独な癌治療の中で、大きな支えとなってくれた。とても心強かったです(A子さん)」。
 この国の医療のカギは「スピード」と「ホスピタリティ」。もちろん、それ相応の治療費はかかっていることでしょうが、保険などに加入していたことでその痛手は少なかったと話していました。
 現在、約3万人のシンガポール在留邦人に対し医師免許の二国間協定・互換制度によりシンガポール国内で診療を認めている日本人医師は概ね30人となっています。シンガポールでは日系クニックが5病院、日本語が流暢な医師がいるクリニックが2病院、計7病院があります。もちろん、どこの日系病院も専門医や総合病院と連携されています。この国には、秀でた先進医療とそれを育む環境、しかもスピードとホスピタリティのある医療機関が揃っているのです。ビジネスも観光もいいですが、まずは、ご自身の健康管理から、始めてみませんか?ここ医療大国シンガポールで。

※米国「医療の質と患者の安全に関する継続的な改善」に関する第三者評価認証機関The Joint Commissionの国際部門非営利組織Joint Commission Internationalの略称。JCIにより審査され、認定基準を満たすことにより、国際基準の医療の質、患者安全を担保した医療施設であると認定されます。 (取材・文/Asia X編集部)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.342(2019年2月1日発行)」に掲載されたものです。取材・写真 / AsiaX編集部

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