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熱帯綺羅

2019年3月27日

調和と融合の国、シンガポール アート大国への挑戦

 国中がアートで溢れているシンガポール

 街全体が活気づくストリート・アート

いたるところにオブジェが点在

 

 次々と新しいアートスポットが誕生し、話題を呼んでいるシンガポール。観光立国政策の一環として、アート業界の育成にも力を注いでいます。この国のアートシーンは今、どのようになっているのか、探ってみることにしました。

 

国を挙げたアートタウン化計画。斬新なアイデアで攻勢をかける

 シンガポール国立博物館、ナショナル・ギャラリー、南洋理工大学シンガポール現代アートセンター、アート・ミュージアム、アートサイエンス・ミュージアム、アーツハウス、ギルマン・バラックス……。国中を巻き込んだアートイベントが定期的に開催されるなど、この国ではアートへの投資が積極的に行われています。

 今年で7回目を迎えたシンガポール・アート・ウィーク(SAW)は、ビジュアルアートのイベントとして、毎年1月に開催。国家芸術評議会、シンガポール政府観光局とシンガポール経済開発庁が協働し、アジアのアートの中心地としてシンガポールの地位を強化しようという目的で催されています。2019年は1月19~27日まで催され、伝統的なものから現代的なビジュアルアートまで、質の高いアート体験を提供。ギャラリーや美術館、独立したアートスペースまで、シンガポール中の会場で実施され、すべての人がアートを楽しめる機会となりました。今年はギルマン・バラックスで、26ギャラリーが参加する新たなイベント「S.E.A. Focus」がスタートするなど、アートシーンはますます加速しています。夜は「iLight Singapore」とSAWがコラボレーションし、ナショナル・ギャラリーや近隣のミュージアムがインスタレーション手法により、色とりどりのライトに照らされ、普段はひっそりとたたずむ夜の美術館を鮮やかに映し出しました。人があふれかえって会場が盛り上がるというよりは、散歩のついでにちょっと覗いていく人や併設されているカフェでダイニングを楽しむ人たちがいるといった様子で、すでにアートが生活の一部として溶け込んでいるように見受けられます。

 

色鮮やかに浮かび上がるナショナル・ギャラリー・シンガポール

 

 

 

 

 

未来のアーティストを生み出すラサール芸術大学

 

ギルマン・バラックス、アートの情報発信地

多くの来場者でにぎわった草間彌生展

 

揺れるアート業界

 2011年から続いていた「アート・ステージ・シンガポール」が、今年1月25日の開幕を目前に中止と発表され、シンガポールのアート業界に激震が走りました。アート・ステージ・シンガポールは、マリーナベイ・サンズを舞台に東南アジアでもっとも巨大なアートフェアとして実施されていましたが、年々参加ギャラリー数は減少。16年に170、17年に131、18年は80、今年はわずか45まで落ち込みました。その後、世界最大のアートフェア「アート・バーゼル」などを手がけるスイスのMCHグループは、2019年に新たなアートフェア「ART SG」をシンガポールで開催する予定でしたが、こちらも2019年1月に中止を発表。今度は10年間、アート香港フェアを手がけてきた台北ダンダイフェアディレクターのマグナス・レンフィル氏がフェア開催の予定を発表しました。この迷走ぶり、業界は今、踊り場にきているのでしょうか。

 2017年ナショナル・ギャラリーでの草間彌生展は、過去最高の入場者数になり、大成功だったと言われています。しかし、実施にこぎつけるのは相当の苦労があったようです。業界関係者は「この国のアート業界はまだまだ発展途上、アーティストを育成することはもちろん、それを鑑賞するオーディエンス、そして目利きするキュレーターの育成が何よりも急務。特にギャラリ―に求められることは、アートの売買をするだけでなく、いかに作家を掘り出して育てるか、一緒に成長できるかがカギになってくるでしょう」と話します。

 

街そのもの、生活そのものがアート

 街を見渡してみたら、単に美術館、博物館の中だけでなく、街のいたるところにアートが溢れています。イベントもしかり、オブジェ、壁画、建造物が混在し、実に新旧ユニークな街並みです。大辞林によるとアート(芸術)の定義は「特殊な素材・手段・形式により、技巧を駆使して美を創造・表現しようとする人間活動、およびその作品」とあります。となると、この国自体がアートである、と言ってもよいのかもしれません。

 東西文化の交差点、歴史的な建造物と近代的な摩天楼、緑豊かな公園。様々なコントラストの中でインスピレーションが広がる可能性を秘めています。多種多様な民族が集まり、それぞれの文化がひしめきあう――伝統とモダンの調和、科学とアートとテクノロジーの融合、まさに都市そのものがアートなのです。

 日本では有名な芸術作品や海外からの高い値が付いた作品を「観る」ことに重点が置かれがちです。一方、生活とともにアートが存在するというレベルまでアートに対する啓蒙が行われているシンガポール。両国のアートに対する捉え方の隔たりが大きいことは否めません。

 さあ、せっかくのアートの国での滞在、街とアートと融合し、感覚を研ぎ澄ませてみてはいかがでしょう?

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.344(2019年4月1日発行)」に掲載されたものです。取材・文/ AsiaX編集部

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