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熱帯綺羅

2019年3月8日

悠久の時を超えて 行く“シティ・イン・ ア・ガーデン”

 

未来庭園 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

まるで空中ジャングル、パークロイヤルピッカリングホテル

5ドル紙幣の樹 ボタニック・ガーデンのテンブの樹

 

『この新しい植物たちが生育すれば、気温が下がって過ごしやすくなり、今とは違うシンガポールになる。(Youʼll have a different city.)』ー故リー・クアンユー初代首相の伝記
“LEE KUAN YEW―THEMAN AND HIS IDEAS”の冒頭です。国の存続をかけた都市開発計画で「緑化」は優先課題であり、
積極的に取り入れていたことがわかります。世界有数の都市国家として名高いシンガポールのインフラ整備は、緑と近代的建造物が融合した「ガーデンシティ」をフラッグシップに安全、清潔のグリーンシティとして世界中に名をとどろかせています。

 

シティ・イン・ア・ガーデン”への転換

2001年、都市全体がまるで庭園の中にあるような都市をイメージした政府による総体的な都市計画、”シティ・イン・ア・ガーデン”が開始され、これを具現化したものが2012年にオープンした『ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ』。来場者は年間880万人を超え、シンガポールを代表する名所になりつつあります。バオバブの木やドーム内の珍しい蘭やシダ類の高山植物など、様々な植物が生育され植物園は今やシンガポールの新しい緑化都市としてのイメージシンボルとなり、世界中から観光客や投資を呼び込んでいます。また、国は建築物のグリーン化にも力を入れ、2030年までに、建築物の80%を環境に配慮した設計の建物にしようと目標が掲げられています。ビルの屋上や壁面の緑化用に50%の助成金が出ることから、現在シンガポールにあるビルの総緑化面積は100ヘクタール以上にもなりました。洗練された建築物と緑や広場を融合させ、その範囲も拡大されて来ています。年中暑いシンガポールのこの取り組みは、昨今、問題のヒートアイランド現象の緩和策になるのではないかと世界からも注目されています。
2013年に「ホテル・イン・ザ・ガーデン」というコンセプトでオープンしたパークロイヤル・ピッカリング・ホテルは、建物の外壁に沿ってつくられたグリーンガーデンが空中に浮かぶジャングルのようで、随所に最新鋭のエコシステムが採用されています。徹底した環境への配慮が高く評価され、シンガポール政府が実施する環境配慮型建築物の推奨認定制度「グリーンマーク」のプラチナ賞、太陽光発電パイオニア賞など、さまざまなアワードを受賞しています。そしてついに、シンガポールは2017年には緑の面積の割合が約30%と、世界17都市中最も高いことが、マサ
チューセッツ工科大学(MIT)と世界経済フォーラム(WEF)の共同調査により発表されました(参照:「ツリーペディア」http://senseable.mit.edu/treepedia/cities/singapore:2019年1月時点では24都市中で2位。ちなみに、トップは米フロリダ州タンパで36.1%。ロンドンは12.7%、神戸が9.4%)。

国全土に拡がりつつあるパークコネクター

足元にいたオオトカゲ

街路樹の王様アンサナの樹オーチャードにて

セントーサ島で怒っていた孔雀

 

変化する緑化政策

2013年の土地利用計画の中に、居住者の85%が公園の400メートル以内に住めるようになることが目標とあります。シンガポール島内には423の公園と4つの自然保護区がありますが、それらの公園を「パークコネクター」と呼ばれる車いすでも移動可能な立体歩行者道や緑道網を国土全体に展開、休憩所や案内所、レンタサイクルステーションなどが整備されています。2013年から整備を開始、 2020年までには360kmのネットワークが完成する予定です。都心部だけでなく、郊外の住宅地エリアでも展開されます。家を出たら庭園の中にいるような感覚、緑や水との接触機会を増やす工夫がされ、住む人の生活環境の向上に主眼が置かれています。住区が公園と結ばれることでコミュニティの拠り所となり、家族や友達とのピクニックや恋人同士が語らう新しいパブリックライフを生み出しています。まさに“シティ・イン・ア・ガーデン”という都市イメージにふさわしいランドスケープが実現され始めています。都市周縁部の広域緑地をつなぎ、島全体で都市と自然の共生を図ろうとするものであり、単なる規模の拡大だけではない複合的な目的が存在しているのです。“シティ・イン・ア・ガーデン”の取り組みは、環境だけでなく、人々の意識も「開発」することを重視していると言えるでしょう。
人の暮らしの豊かさを重視している点が、国の政策転換の大きなポイントであると言われています。今まで、貿易や観光など外資を誘致するための経済投資などの施策を重視してきましたが、国際的な評価が確立し経済基盤が整ったことから、これからの持続可能な発展を支えるための緑化計画への国民の理解や協働が求められるようになってきたようです。生活環境の充実や暮らしの満足感の享受、そして国に対する誇りや愛着を高めるといった“国民目線”の目的・目標へと変化してきました。国民が主体的に都市にかかわることで生まれる持続性の確立こそが、シ
ンガポールがいま、最も重視している緑化の要因だと言えるかもしれません。
さて、忙殺されている毎日、たまには近くの公園に行って自然を感じながら、悠久の時を感じてみてはいかがでしょう。ボタニック・ガーデンで5ドル札のモデルになった「テンブ」の樹を眺めたり、セントーサ島で樹齢100年の「アンサナ」に圧倒されてみたり、オオトカゲや孔雀と出くわしたりするのもいいでしょう。イーストコートパークで友人や家族とBBQやサイクリングを楽しんでみたりするのも、シンガポールでの生活する楽しみ。深呼吸して緑の美しさに体を浸し、安らぎと明日への活力が湧き上がってくるのを実感してみせんか?ー50年以上前、手付かずの森林がまだ多く残っていた時代に、リー・クアンユー氏の描く街づくり構想の中にはすでに今日、そして、未来の姿がはっきりと見えていたのかもしれません。

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