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熱帯綺羅

2018年9月27日

シンガポール富裕層を描いたハリウッド映画「クレイジー・リッチ!」

期待を裏切らない “狂気なほどのラグジュアリー”が痛快

 「中国系の人たちは、リッチだから」……。来星してからというものこんなセリフを一体何度聞いたことでしょうか。「クレイジー・リッチ!(CRAZY RICH ASIANS)」には、豪華絢爛な中国系の人々のライフスタイルが描かれていますが、中でも不動産界の女帝を母親にもつアラミンタが、独身最後の記念パーティーとして出席者全員をインドネシア・スマトラ島のリゾートへ母親所有の自家用ジェットで招待するシーンが印象的です。
 
 「スマトラ島には金持ちが多く住んでいる。インドネシアの有名な歌手たちは、中国系富豪のプライベート・パーティーのドサ回りをして稼ぐみたいですよ」。筆者がジャカルタで出会った、中国系の超富裕層向けウェディング専門誌の編集長が教えてくれました。「読者層の結婚式の予算?それはアンリミテッド(無制限)」と言っていたのが忘れられません。
 
 8月15日に全米公開され、堂々全米1位を獲得した「クレイジー・リッチ!」。オールアジアン・キャストによるハリウッド映画の大ヒットは1993年に制作された『ジョイ・ラック・クラブ』以来、25年ぶりとのこと。ちなみに、キャストは様々な国から集められていますが、シンガポール人という設定でありながらいわゆるシングリッシュを話す人は誰もいません。今、「こんなにセクシーな俳優はいない」とアメリカで絶賛されている主人公のニック(ヘンリー・ゴールディング)はブリティッシュ・イングリッシュを話し、「教育はイギリスで受けた」ということを匂わせます。実際に、ヘンリーはマレーシア出身でイギリス人とマレー人のハーフなのだそう。まさに、はまり役です。

 

街中に飾られた「クレイジーリッチ!」(CRAZY RICH ASIANS)ポスター。日本での封切りは9月28日。

 

シンガポール・ロケで選ばれたのはあの名所

 撮影場所には、マーライオン公園やマリーナ・ベイ・サンズのインフィニティ・プール、チャイムス・ホール・チャペルやラッフルズ・ホテル、そしてシンガポール三大ホーカーズのひとつであるニュートン・フードセンターが選ばれました。
 
 元修道院で、現在はレストラン等が入った複合施設「チャイムス」で撮影されたシーンは本作のクライマックス、4,000万ドルの結婚式です。普段、この施設付近で気軽にランチをすることも多いのですが、チャペルの中はこれほど美しい内観だったとは!このシーンには、チュウ監督が本作の構想を練っているときに発見したポイントが集約されているとのこと。「どれだけ金をかけたかという問題だけではないのです。この階級の人間なら、それくらいの金は出せる。ヨットもビルも車も同じものを買うことができる。自分も金持ち、周りも金持ちという場合、勝負の決め手はアイデアとオリジナリティです。なので、前代未聞の結婚式にするしかありませんでした。このシーンは派手にならないように考慮し、伝統的なタッチも加えたかった。そこで2メートルくらいの竹の扇には結婚式の縁起物である不死鳥や龍をデザインし、スタンダードな提灯には新郎新婦の名や繁栄と子宝の象徴を描きました」。

 

ウェディングシーンのロケ地、チャイムス・ホーム・チャペル周辺はオープンエアの店が軒を連ねる。

 

精鋭クリエイターチームの美意識が集結

 キャッチーなラブコメディーである本作ですが、美しいインテリアや、富裕層の人々が身につける衣装なども見どころのひとつ。衣装探しには、イギリス、香港、アメリカまで足を伸ばし、バレンティノ、アルマーニ、ディオール、ショパール、ブルガリ……といった、有名ブランドの服を揃え、数百万ドルの宝石を借りたとのこと。そんな中、貫禄マダムを堂々演じたアジアを代表する大女優、ミシェル・ヨーは「私物でいいかしら」と、自前の指輪をつけて撮影に臨んだというこぼれ話も!
 
 受賞経験をもつ衣装のメアリー・フォークト女史は「シンガポール、中国、マレーを加えて、さらにインドとイギリスのテイストを足すと、リッチでエキゾチックな無国籍のスタイルが完成します」と語っています。スタッフにとって今回のロケ地は東南アジア以外には考えられなかったとのことで、「この映画の質感や非日常感は東南アジアで撮影したからこそ生まれたもの。どこにカメラを向けても、面白い被写体が見つかる。異文化がユニークに混在する場所です」とチュウ監督。
 
 また、プラナカン・デザインのファンにとっては、たまらないシーンが次々に登場するのも見逃せません。美術のネルソン・コーツ氏は、主人公・ニックの先祖の家を設計するにあたり、時代考証を重ね、プラナカン文化に深く入り込んだとのこと。「プラナカンはシンガポール海峡発祥の文化で、中国、台湾、香港のどのスタイルでもありませんが、その三者にヨーロッパの趣を融合したもの。その建築物は、石膏細工を特徴とし、花や動物の装飾が施され、よろい窓やカラフルなセラミックタイルが使われています。この土地は、何世代にもわたって一家が所有しているという設定のため、コーツは歴史を反映させるためにプラナカンのデザインを取り入れることにしました」と語っています。シンガポール在住者にとっても、新しい発見があるエンターテインメント作品。ぜひ皆さんもチェックしてみてください。

 

今、最もセクシーな俳優とアメリカで話題のヘンリー・ゴールディング(中央)とジョン・M・チュウ監督(右)。
原作の著者、ケヴィン・クワン氏のインタビュー動画と共にコーナーが設けられた紀伊国屋書店。

 

「クレイジー・リッチ!」
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND
SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給 : ワーナー・ブラザース映画
監督 : ジョン・M・チュウ『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』 
原作 : ケビン・クワン著「クレイジー・リッチ・アジアンズ」(竹書房より)
出演 : コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー、オークワフィナ、ソノヤ・ミズノほか
配給 : ワーナー・ブラザース映画 宣伝 : スキップ
2018年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/英語/121分
原題 : Crazy Rich Asians
Photos : Warner Bros. Singapore.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.338(2018年10月1日発行)」に掲載されたものです。取材・写真: 里村 由紀

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