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熱帯綺羅

2017年4月25日

シンガポール有数のタイ人街「ゴールデンマイル コンプレックス」

チャンギ国際空港からシティ方面に向かい約20分、カランを越えるとニコルハイウエイ沿いに見えてくる段々畑のようなビル。つい目を奪われるこの特徴的な建物は、別名「リトル・タイ」と呼ばれるゴールデンマイルコンプレックスです。タイ人だけでなく、マレーシアなど近隣諸国へ旅行するツーリストや買い物にやって来るシンガポール人、海外からの駐在員たちも訪れるこの建物。独特の匂いと雑然とした空気感が、他のショッピングセンターとは違った魅力を醸し出しています。

 

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ビーチロードから見たゴールデンマイルコンプレックス。採光と通気性を考慮した設計となっている

 

シンガポール初の複合ビルとして1970年代に完成

ゴールデンマイルコンプレックスがオープンしたのは今から45年前の1972年です。建設費用1,800万Sドルをかけて建設された16階建てのこのビルは当初、ウォー・ハップ・コンプレックスと呼ばれていました。シンガポール最大手の建設会社のひとつであるウォー・ハップが手掛けたからです。このビルは、世界的に有名な建築家ル・コルビジェや、都市計画家アントゥーロ・ソリア・イ・マータが提唱した都市計画構想の影響を受け、店舗とオフィス、住居で構成されるシンガポール初の複合ビルとして建設されました。

 

1972年1月に行われたカクテルレセプションには、地元の有力者ら2,000人もの人々が集まり、ビルの完成を盛大に祝ったそうです。また、ビルの窓から見える美しい海の眺めが人気となり、当時は島内でもトップクラスの企業が多く入居していたといいます。

 

1972年のオープン当初から45年間、同ビルの一階で写真店を営むアンディ・ライさんは、出来たばかりの頃のゴールデンマイルコンプレックスについて、「他にはない最新式のビルとして多くの人が集まり大変華やかだった」と、当時を懐かしく振り返ります。ライさんによると、1980年代に入るとタイの旅行会社がこのビルでシンガポールとタイを行き来する長距離バスのビジネスを始めたそうです。当時、タイからやって来る人の多くは建設労働者。この場所にタイから来る人たちが集まるようになったことから、同ビルの趣が少しずつ変化していったといいます。

 

普段は建設現場で寝泊まりしていた彼らですが、給料日である毎月6日と20日になるとゴールデンマイルコンプレックスにやって来てはタイの食べ物や薬を購入したり、祖国であるタイへ送金したり、飲んだり食べたりと大変な賑わいで、店も繁盛したそうです。当時は建設ラッシュで景気も良く、同ビルには、タイ料理のレストランや食材店などがどんどん増えていきました。

 

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ビルがオープンした1972年から1階で写真店を営んでいるアンディ・ライさんは、正にこの建物の生き字引。ビル内で店舗を営むほとんどの人たちと知り合いだという
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ゴールデンマイルコンプレックスで一番初めにタイ~シンガポール間を結ぶ長距離バスのビジネスを始めた「PHA(S) TRAVEL SERVICE」

 

マリーナベイサンズなどが一望できる住居部分

現在のゴールデンマイルコンプレックスは、1~3階部分を主に店舗が占め、4~9階にはオフィスが多く入居、そして10~16階は住居となっています。1階には、人気のタイレストラン「Diandin Leluk」があります。1980年代初頭、工事現場で働くタイ人のためにトローリーで国内を回りランチボックスを販売していたところ人気となり、1985年にゴールデンマイルコンプレックスに店を構えました。トムヤンクンやマンゴーサラダなどは、普通にオーダーするとタイ本場の辛さになるので、注文する際に調整してもらうといいでしょう。このレストランではお持ち帰り用に、タイのデザートとして有名なマンゴーともち米でできた“カオニャン・マムヤン”やタピオカなども毎日手作りして販売しており、人気を集めています。また、GSTやサービスチャージがかからないのも嬉しいポイントです。

 

2階には大きなタイマーケットが店舗を構えています。マネージャーによると、野菜や果物など多くの商品はタイから仕入れているとのこと。他では手に入らない食材を求めて人々が買い物にやって来るのも納得です。価格が比較的安いのも人気の理由だそうです。

 

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陸路で運ばれてきたタイの新鮮な果物。1階の階段脇で販売している
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1階にある人気のタイレストラン「Diandin Leluk」。ランチタイムや週末は多くの人たちで賑わっている

ライさんによると、店舗の8割はタイ関係の企業で、住居部分にはタイ人だけでなく、日本人も含めさまざまな国籍の人々が住んでいるそうです。そのうちの一室に住む日本人女性によると、彼女の住むユニットには全部で14部屋あり、15人の住人のうち12人は日本人。住み込みのメイド2人が、掃除洗濯やアイロンかけなどの家事を全てこなしてくれるそうです。自転車が乗り回せそうな大きなリビングからはマリーナベイサンズやシンガポールフライヤー、ナショナルスタジアムなどが一望でき、素晴らしい景色を堪能しながら快適に過ごせるとのことでした。

 

タイ人街として変化しながら現在に至るゴールデンマイルコンプレックス。機会があればぜひ一度、その独特の魅力を体感しに訪ねてみては。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.321(2017年5月1日発行)」に掲載されたものです。取材・写真: 平野 かほる

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