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熱帯綺羅

2016年11月7日

人情味溢れるご当地歌謡ショー 歌台(ゲタイ)へ行こう

シンガポールの華人社会には歌台(Getai:ゲタイ)と呼ばれる歌謡ショーがあります。中国語、福建語、潮州語の楽曲が中心で、ショーが行われる場所もHDB(公団住宅)や駅前の空き地、または中華寺院の敷地に設営した屋外テントが主な舞台です。スケジュールも華字新聞の夕刊に載る程度で、我々外国人にはなじみが薄いかもしれません。夕暮れから始まる歌台は常に入場無料、近くの住民たちが普段着で集い、舞台ではきらびやかな衣装をまとった歌手が人情味あふれる「演歌」を歌い上げ、司会者と絶妙なコントを繰り広げる――そんな昔ながらの庶民の愛する娯楽が垣間見られる歌台をご紹介します。

 

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歌台の楽しみは何と言っても歌手の衣装とステージ装置。けばけばしいだけのイメージから洗練されたエンタメ性の高いものへ進化している。写真は実力派歌手のユアン・ジンさん。

 

ハングリー・ゴーストは歌台がお好き

旧暦7月の中元節(仏教の祭日、日本でいうお盆)の前後1ヵ月間は、下界に降りてきた無縁仏(ハングリー・ゴースト)の供養のために、伝統的には「街戯」と呼ばれたチャイニーズオペラが寺院などで奉納されていました。劇団の減少とともに1970年代から歌台がそれに代わって盛んになり、今でも旧暦7月(2016年は8月3日~31日)には島内各地で月間300回以上も歌台が開催されています。

 

現在の歌台はこの時期以外にも寺院やコミュニティ、企業からの招聘で年間を通して開催されており、時代に合わせてモダンな演出になりました。とはいえ、この旧暦7月中はハングリー・ゴーストのために最前列の席を空け、食事と飲み物が並べられた無人の円卓やお供え台が用意されます。舞台からは歌手が祭壇に手を合わせ、選曲もより伝統的なものが増えるそうです。

 

一方で、20年ほど前から「ワンパターンで古臭い」、「大音量で騒しい」、「ハングリー・ゴーストのためのもの」という歌台の悪しきイメージが定着し、若年層がどんどん離れていきました。当時有名な司会者のアシスタントをしていたアーロン・タンさんは、新しい歌台のシーンを作るため2001年に弱冠25歳でオーガナイザーとして起業。ハイテクの音響やLEDの照明装置などを積極的に導入し、舞台の質を著しく向上させました。また、歌手の衣装や選曲にも積極的にアドバイスするなどイメージアップにも努めたといいます。徐々にアーロンさんの努力が実を結び始めたころ、2007年に二人の女性歌台歌手のストーリーをシンガポール人のロイストン・タン監督が映画化。この映画「881」がヒットすると、それをきっかけに歌台に興味を持つ人や歌手を目指す若手が増え、観客の年齢層も幅広くなりました。

 

歌手になるためには、中国語の方言の歌詞の楽曲をたくさん覚えたり、衣装の準備、営業などのマネジメントも自分でするのが一般的です。容易な道ではありませんが、熱意と才能のある人が増えており、次世代の後継者の心配は減ったとのこと。現在は100名ほどの現役歌手がいて、シンガポール人のほかにもマレーシア、台湾や中国からの歌手もいます。

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