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熱帯綺羅

2010年10月4日

お気に入りの「裏通り」、ハジ・レーンを歩く

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シンガポールの大型モールにはない、ボヘミアン・シックなオリジナルがいろいろ見つかる「裏通り」がハジ・レーン(Haji Lane)。端から端まで5分もあれば通り抜けられるショップハウスが立ち並ぶ小さな通りですが、その両脇には個性的なセレクトショップや専門店が並びます。一点もののアクセサリーやビンテージの服、コレクターアイテムとなっているスニーカーや、地元デザイナーのオリジナルレーベルのドレスやシャツなど、ここでしか手に入らないものがたくさんあり、たいていのものは値段もリーズナブルです。
5年程前からシンガポールの地元クリエイターやデザイナー達が、オフィス、ブティックやカフェなどをこの通りの旧いショップハウスに構え始め、トレンドに敏感な若者が集い、新しいスタイルを発信する場としてその存在感を高めてきました。まさにシンガポールのソーホー、裏原宿といったところでしょうか。最近では、ガイドブックに取り上げられることも増え、観光客も多く見かけるようになりました。

 

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ハジ・レーンの生い立ち
ハジ・レーンは、観光地のひとつでもあるアラブ・ストリートの至近、カンポン・グラムと呼ばれる地区にあります。トーマス・ラッフルズ卿がシンガポールに上陸して間もない19世紀初頭、この一帯は、シンガポールをイギリスに譲渡したサルタンの支配地を中心にモスクなどを備え、マレーシアやインドネシア周辺のイスラム系移民の居住区とされました。また通りにも多くあるグラムというユーカリの一種である木の名前をとって、「カンポン・グラム(グラム村)」と呼ばれるようになりました。
また、その当時は、海に面していたビーチ・ロードに港があって、シンガポールの内外から集まった多くの人々がここからメッカへの巡礼の旅へ出発しました。そのメッカ巡礼者のエージェントとして経済的に成功を収めたのがアラブ系移民たちであり、モスク(イスラム寺院)や学校などをこの地区に寄附・寄進し、街を発展させていったのです。
今でも彼らの影響力が道の名前となって残っており、その名残がそこここに伺えます。ハジ(Haji)とは、イスラム教における五行のひとつであるメッカ巡礼を差し、ハジ・レーンは、特にそのハジに出かける巡礼者が待機する宿などが並んだことから名がついたといいます。20世紀に入ると、シンガポールへの移民数の増加や、国の発展に併せて、アラブ系やマレー系の住民も郊外へと移り住み、カンポングラムのほとんどがインド系や中国系の人々の小売店が立ち並ぶエリアとなりましたが、水パイプを出すカフェ、香水や,ムスリムの女性が纏う黒いチャドルを売る店など、特にアラブを彷彿とさせるイスラム教の文化は色濃く残っています。今でもハジ・レーンに並ぶショップハウスのオーナーには、アラブ系の子孫達が多くいるんだそうです。
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個性が光るショップとその住人たち
そんなハジ・レーンの昔話を教えてくれたのが、北欧のビンテージ家具やそのレプリカ、インテリアや建築デザインの書籍を扱うショップ、「ア・サウザンド・テールズ(A Thousand Tales)」のマネジャーであるファーミー・イシャクさんでした。外から見るとカフェやリビングルームのようにも見える、気持ちよくデザインされた内装と、センスよく配置されたユニークなデザインのチェアやテーブルに目が奪われます。この店の家具は、比較的リーズナブルな値段でオーダーメードできるのが魅力。ショップハウスの2階のショールームの奥にくつろげるカフェもあり、ゆっくりとした時間を過ごすにも最適です。
ファッションのトレンド発信といえば、いくつかユニークなブティックがある中で、シンガポール人デザイナーによるシンプルでこだわりのあるデザインのシャツやボトムスを扱う「ホワイトルーム(White Room)」も見逃せません。ゆったりとした店内を闊歩するボスネコのいる風景に気持ちも和みます。30代前後を中心としたこの界隈のショップオーナーやデザイン事務所のクリエイター達は、お互いを刺激しあうかのように行き来する良い関係があるようで、通りの近況をたずねると、「最近できたいい感じのブティックを紹介するよ」とわざわざその店まで案内し、オーナーを紹介してくれるほど。自ら店番をしていることも多い彼らとちょっとした会話を楽しみながら、お気に入りの店を見つけるという特別な時間がここにはあります。
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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.176(2010年10月6日発行)」に掲載されたものです。 取材:桑島 千春

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